ForGetting Things Done

「水のように澄みきった心」で頭空っぽに。

GTDなりの「やる気」の出し方

「やる気」は湧いてくるのか
「やる気を出せ!」「はいっ!」「もっとやる気を見せろーっ!」「はいっ!」という不毛なやりとりは私が苦笑してやまないものです。日本語でも「やる気」は湧いてくるものだとされています。どこから湧いてくるのでしょうかね?

 

私は、どこからか湧いてくる、汲めども尽きぬやる気の泉のようなものがあるとは思えません。自分から湧き上がるものだ!という意見もあるかと思いますが、出せと言われて必ず出るものではないので、やっぱり冒頭の会話は不毛なままです。

 

GTD本の熱い一節

タスク管理メソッド”GTD”の開祖デビッド・アレンは、以下のようなアツいメッセージを読者に送っています。

目標が見えて、そこに向かっていく自分が見えれば、血だらけ泥だらけになってきるという事実は、すぐにどうでもいいことになるはずだ。あなたは今、チャレンジされているのだ。それに向かってゆこうではないか。
(デビッド・アレン「ストレスフリーの仕事術 仕事と人生をコントロールする52の法則」)

おお、熱い。熱すぎる。では、GTDの枠組みの中でも、まるでサイヤ人になるがごとく、「やる気、出ろ~~~~!」と力を入れればやる気が出て、仕事が進んでいくのでしょうか。

 

GTDでの「やる気」の定義

しかし、どこへ向かうのかを知っていても、巨大な力に圧倒され、どうしたらいいか分からないことがある。そんなときにやるべきことはただひとつだ。それは次のアクションを決めることだ。右へ行くか、左へ行くか?パスをするのか、走り抜けるのか。
(中略)
何をするにも、つねに次のアクションが決め手となる。そして次のアクションを想像できたときにはじめて、エネルギーが身体の中から湧き出てくるのだ。
(デビッド・アレン「ストレスフリーの仕事術 仕事と人生をコントロールする52の法則」)

ホッとしました。ちゃんと「やる気が湧くための手順」が明確になっているので、雲をつかむような話に終始しているのではありません。

 

「やる気を出す」=「小さな行動に分解する」

「次のアクションを決める」ことが「こりゃ自分でもできるかも」と思わせ、その連続で目的へ向けて進んでいく、という仕組みです。ここでの「次のアクション」とは「イメージできるくらいに具体的な行動」であり、例えばスイカを買うときの「スーパーへ行く」です。壮大な目的も小さな行動に分解すれば「これならできる」と考えることができ、その心の変化こそが「やる気を出す」に他なりません。

 

つまり、「頑張り」「忍耐」「石にかじりついても」「一週間に10日来い」といった安直な根性論を、GTDは採用していないんですね。この冷静だけど真摯な取り組みの姿勢を、是非広めたいと思っています。

仕事に支配される、仕事を支配する

タスク管理の対象にならないもの

タスク管理メソッド"GTD"の考案者デビッド・アレンは「頭の中にある全てのやりかけのことを書き出そう」と言っています。それなのに、ああそれなのに。

 

(タスクリストを作る)その本当の目的とは「やりかけの仕事を片付けることによって、本当にやりたいことのために集中力と創造的なエネルギーを100パーセント使えるようにすること」なのだ。

(中略)

私が「やるべきこと」のリストを持っていなかったら(中略)「リストの中の仕事を後回しにしても大丈夫だ」ということが分からなかったかもしれないのだ。

(デビッド・アレン「ストレスフリーの仕事術  仕事と人生をコントロールする52の法則」)

 「本当にやりたいこと」をやるために、「やりかけの仕事」を管理するということですね。

 

「タスク管理外」の確保

仕事が「本当にやりたいこと」であることはあまりないと思います。上の引用でデビッド・アレンが言いたいことは、本当にやりたいことを考える精神的な余裕を持つためにタスク管理を使うという考え方なのでしょう。会社を出たら仕事のことは忘れる、というものです。

 

仕事のことはパアッと忘れて

仕事のことはパアッと忘れて飲もうじゃないか!なんて言葉がありますね。あれは全然忘れられていないのは自明だと思います。飲んでいるときに仕事の話とか普通にしますしね。本当に仕事をパアッと忘れている人は、飲まなくても普通に退社した時点で忘れてます。

 

「会社を出たら仕事上のタスクから精神的に解放される」には、それらを一旦キチンと把握し、把握した上で脳の外に追い出すことが必要です。「把握」と「追い出し」。この2つを実現するのが「リストに書き出す」です。

 

リストに書き出すことによる「脳の外に追い出した感」は非常に大きく、そのお陰で、仕事以外の時間に仕事のことを思い出して不安になることはなくなりました。

 

これが、仕事を支配するということなのだなと思います。「仕事を支配する」なんて壮大で難しいことのように思えます。しかし、その実「リストに仕事を書き出す」でしかないというわけです。

 

タスク管理で仕事を支配して、心ゆくまで仕事以外の時間を楽しむのも大アリだと思います。よろしければご一緒に。

 

手負いの虎は侮れない

 手負いの私

 手負いの虎という言葉があります。危機に瀕した虎は必死に抵抗し、普段の何倍もの力を発揮するというものです。今考えれば、手負い状態の私はかなりの力を発揮したのではないかと思っています。

 

私にとっての「手負い」とは、一度のみならず二度も仕事が八方塞がりになって自分を追い込んでしまって、仕事ができない状態(抑うつ状態)になってしまったことです。

 

家に引きこもって完全に社会からドロップアウトすることはできなかったので、会社の規定最長の3ヶ月休職をし、復帰をしまして復職しました。この時、私の中では「もう失敗はできない」と手負い感MAXでした。

 

「できない自分」と向き合う恐怖

手負い状態の私に突きつけられたのは、また同じようなことがあっては、今の会社ではやっていけないということでした。「できない自分」のできなさ加減を知り対策を立てなければこの先はないということです。

 

できない自分と向き合うのは、大変な恐怖です。あれもできるはず、これもできるはず、空も飛べるはず、と考えていた自分の可能性がどんどん狭められ、「お前はできない奴だ」という残酷な現実を突きつけられるわけです。

 

そこでやっと自分の弱点を受け入れることになります。仕事における「抜け」「漏れ」「忘れ」「先送り癖」「段取り下手」など。特に頼まれた仕事を忘れてしまうことが一番精神的に堪えるものだったので、忘れてもいいように仕事を頼まれたら全部メモしてしまおうと考えて、エクセルでポチポチ入力していくことにしました。今思えば、これが私のタスク管理へのターニングポイントだったと思います。

 

自分のすべてをさらけ出す

こうして私のタスク管理が始まったわけですが、いわゆるツールを取っ替え引っ替えしてタスクとやらをもてあそぶ高等遊民といったタスク管理への一般的(…かどうかは分かりませんが)なイメージとは違います。

 

タスク管理メソッド"GTD"の考案者デビッド・アレンは、このように書いています。

無意識に抱いている恐怖に立ち向かい、自分のすべてを紙の上にさらけ出した人たちはその結果何を得ただろうか。彼らは実際には怖じ気づくどころか、すばらしい解放感を得ることができたのだ。不必要なストレスから解放され、自信に満ち溢れてくる。彼らはこの作業をすることによって、真に創造的な力を得ることができたのだ。

(デビッド・アレン「ストレスフリーの仕事術   仕事と人生をコントロールする52の法則」より)

まさにこの境地でして、自己肯定感が非常に低かった私が自信を持って仕事の報告ができるようになり、会社を出ても仕事のあれやこれやに悩まされていたのが仕事を会社に置いて出てスッキリとした解放感を得られるようになりました。

 

手負いの虎は本当に侮れない、と言うか、むしろ手負った方がいいよ!と言いたいくらいです。よろしければ是非手負いをご一緒に(笑)

「タスク管理」で障害者就労移行支援

「しくじり先輩」「ガチトーーク!」

先日、こちらの障害者就労移行支援事業所でひたすら喋ってきました。

 

exp.or.jp

 

午前中は私の破壊と再生の物語「しくじり先輩」を聞いていただき、ランチタイムは時間管理、午後は利用者さんからの質問に答える「ガチトーーク!」をしました。

 

しくじり先輩

私がどのように失敗して立ち直っていったか。発達障害ではないかと思ってどう診断を受けるまでに行動したか。どんな精神的な土壌があり、抑うつを起こしたのか等をテレビ番組「しくじり先生」よろしくストーリー仕立てでご紹介。4月から月1回の頻度で講座を受け持っていまして、この「しくじり先輩」は毎回同じスライドを使いながら、話す内容をマイナーチェンジさせつつ私のしくじりの歴史をお伝えしています。

 

ランチタイムの時間管理

下記の記事でも書いたように、昼の時間を10分ずつに分け、 昼休憩開始前に予定を書き込み、休憩終わりに「早く終わった」「はみ出した」にチェックを入れてその理由を書く、という時間管理を紙のツールを使って利用者さんに行っていただきました。

hochebirne.hatenablog.com

この時間管理、普通にやろうと思ってもなかなか難しいものなんですね。何が難しいかというと、割り込み予定が入ることをあらかじめ想定して、余裕を持ったスケジュールを立てるということ。大体は予定の枠ギリギリに入れてしまって、あとで追加の割り込みが入り、やむなく終わりの時間を延ばしてしまうことになります。

 

それを見越して、余裕のあるスケジーリングができているんですね。そのために必要なことは「やるべきことを選んで」「やるべきことそれぞれの所要時間を多めに見積もる」ということです。

 

タスク管理に習熟している人でもこれがなかなか上手くいかず、タスクに埋もれて身動きができなくなってしまう人も多いかと思います。しかし、EXP立川の利用者さんは自然にこの2つのことができていました。これは本当にすごいことなのですが、あまりに普通にできていたので、もしかしたらご本人方は自覚がないかもしれません。

 

ガチトーーク!

午後は、これも人気テレビ番組「アメトーーク!」のリスペクト企画で「ガチトーーク!」というものをしました。

 

利用者さんが二人組のグループを作り、それぞれのグループから3つずつ質問を出してもらい、私がそれに答えるというもの。4グループありましたので全部で12個の質問に答えました。

 

質問の内容が「障害者雇用と一般雇用の違い」や「うつ病抑うつ症状からの就職」「タスク管理における自分の仕事である/ではないの判断」「タスク管理の重要性」といったものでした。私が過去に直面してきた問題そのままだったので、大きな共感と共に、自分なりの答えをすぐに伝えることができ、私としても大変充実した、利用者さんの役に立てた企画だったのではないかと思います。

 

就労支援とタスク管理

先月と今月にEXP立川で行った「ランチタイムの時間管理」の手応えから、タスク管理を1つの武器として就労していけるのではないかと思いました。あまりに利用者さんたちがタスク管理について抵抗感なく受け入れつつあるのを見て驚きました。

 

次回は、もっと実践的なワークを予定しています。具体的な「仕事」を行うことを課題として、タスク管理"GTD"の方法論を落とし込んだペーパーを使って実行していただこうということになっています。

 

仕事を進めて完了させるということのみに関して言えば、この方法論を繰り返して慣れたら大きなスキルとなり、利用者さんが自信を持って新しい職場に向かっていける後押しができると考えています。

 

タスク管理についてここまでガチで取り組んで就労移行支援のプログラムを作っている事業所はほぼ無いのではないかと思っています。とても面白いことになってきたなと大変ワクワクしています。

 

私がタスク管理を知って仕事面・精神面においてガラリと変わったことを、EXP立川の利用者さんの方々、ゆくゆくはその他の「自分は要領が悪い、と思い込んでいる人」にも是非経験していただきたいと思っています。

「優先順位を付ける」に対する誤解

空回りする「優先順位」という意味
私の感覚では「優先順位を付ける」という言葉はとても安易に使われ過ぎではないかと思います。この言葉を付け加えれば何となくデキる感がでてくるような、そんな雰囲気すら感じてしまいます。俳句や和歌の枕詞のようです。特定の意味は持たせずに、調子を整えたりするためだけに使われるもの。「優先順位を付けて目標達成に向けて全力で頑張ります」という発言は、「目標達成に向けて全力で頑張ります」という意味でしかないということです。

 

さらに言うなら、「全力」「頑張る」もあまり具体的な内容ではないので、先の発言を意訳すると「目標達成に向けてなんかします」程度の、つまり何も中身のあることは言っていないということになってしまいます。ちょっと皮肉が過ぎましたか。

 

優先順位を付ける大前提
出走者6名の徒競走のうち、3名がスタートの号砲にも関わらず走り出さないで寝ていたとします。走った3名については1位から3位まで付けることができます。寝ている3名の順位は付けられませんね。なんとおバカな例えかとお思いかと思いますが、多くの人の頭の中では優先順位はこのような感じで付けられてしまっているのではないかと思います。

 

全員出走させないと順位はつかないのです。 本当に当たり前すぎて申し訳ないです。ただ、これが仕事の優先順位を付けるとなるとどうでしょう。自分が抱えている仕事全てを「いちについて」とスタート地点に並べることができている人はどれくらいいるでしょうか。優先順位を付けるためには、自分の抱えている仕事を全て揃えて出走させないといけないのです。極端なようですが、全ての仕事をメモか何かに書き出して把握した人だけが「優先順位を付けて…」と言える資格があるのです。

 

常に変化する優先順位
全ての仕事をメモか何かに書き出すことができたとします。それらに優先順位を付けるとなると、以下のような問題が発生します。

「重要かつ緊急な」仕事は一体どこから来るのだろう。そう、それはあなたが「重要かつ緊急な」仕事にかまけて無視していた、「重要だけど緊急でない」仕事からくるのだ。
(中略)
私の分析では、この現象が起こる理由のひとつは、「仕事の優先順位をABCでランク付けしましょう!」という間違えた手法であると思う(そう、あなたも受けたことのある時間管理セミナーでおなじみのあの主張だ)。
(デビッド・アレン「ストレスフリーの仕事術 仕事と人生をコントロールする52の法則」より)

一般的に良いとされている「重要度別にABCに分けて」という手法が否定されています。私はとてもよく分かります。割り込み仕事が入ってきて、しかもそういった仕事に限って他のどんな仕事よりも早く取り掛からなければいけなかったりします。10分前に優先順位第1位だったものが、今は第3位になっているかもしれません。

 

では、どうすればよいのか?
「じゃあ一体どうすれば良いんだよ」と思いますね。唯一絶対の正解は無いと思います。私なりの解決案は、全ての仕事を一望できるようなリストを作り、自分がボールを持っている仕事のみを絞り込むことができるようにしておき、割り込み仕事が入ってきたらすぐにリストに追加し、常にリストを見ながらその時の優先順位を決めていく、です。今のところはこれでうまくいっています。

 

優先順位を決めるためには、全ての仕事をリスト化し把握し続け、常にそのリストを見張っていること。その手順を一から作るのは難しそうに思うかもしれません。タスク管理メソッド”GTD"は、それを一般化して5つのフローに落とし込んでいます。本当の意味で「優先順位を付ける」ことができるようになります。よろしければ是非ご一緒に。

やりかけの仕事を頭の中に残してはいけない

頭をからっぽにして…は空になっていない
「頭をからっぽにして羽を伸ばしましょう!」という、リゾート地への旅行を呼びかける観光パンフレットにありがちなフレーズ、「本当に頭空っぽにできているの?」と思ってしまいます。頭が空っぽになる、もっと厳密にいうと頭が空っぽになったと感じるには、かなり良好に環境を整える必要があると思っています。

 

私は、やり残して不安な仕事がある場合は、どんなにゆっくりのんびりできる環境にいても、頭空っぽにして楽しめた経験がありません。性格もあると思いますが、「ああどうしよう」という状態のまま職場にその気がかりな仕事を置いてきているからだと思われます。

 

「気がかりな仕事」は頭にとどまり続ける
「ああどうしよう」状態の仕事は、どんなことをしていても常に頭を占拠し続けます。「ああどうしよう」状態とは何か。その仕事が今どこまで進捗して、今後どのような段取りを辿っていけば完了できるか(もしくは、さしあたって次の行動が具体的で明確になっているか)が分かっていない状態のことだと私は考えます。つまり、全ての仕事について進捗状況が分かり、段取り(次にとるべき具体的な行動)が明らかであれば良いわけですね。

 

タスク管理メソッド”GTD"の開祖デビッド・アレンは、この「気がかりな仕事が頭にとどまり続ける問題」についてこのように書いています。

あなたが意識していなくても、あなたの頭はある一定のエネルギーを消費し続ける。この仕事はなんだっけ?何をしなくちゃいけないんだっけ?次にすべきことは?あと他に考えることはなんだっけ?
(デビッド・アレン「ストレスフリーの仕事術 仕事と人生をコントロールする52の法則」より)

要らない荷物を載せていると動きが悪くなる車のように、今考えるべきでない仕事を脳内に置いておくと、私たちの思考は鈍くなるようです。そんな荷物は下して軽快にドライブしたいものですよね。私は運転免許を持っていないので「ですよね」と言える資格はありませんが。

 

人間の秘技「忘れる」

私たち人間はコンピューターと違って「自然と忘れていく、しかも必ず」という秘技というか特徴というか弱点を持っています。倉庫業者が「なんでもいくらでも在庫管理しますよ!」と言ってホイホイ荷物を倉庫内に運び込み、1年後に預けた物の取り出しを依頼しても「あ、、、、無いッス」となってしまう。私たちの頭は、情報を保管する機能としてはお世辞にも高いとは言えません。

 

タスク管理以前の私は、メモ等を取らずに「頭に入っています」なんて言ってドンドン仕事を引き受けていまして、まさに上記のような状態でした。そんな当時の私に聞かせたら頭が痛いと苦笑するような内容がこちらです。

新しいプロジェクトを引き受けるのは、かならずしも前向きの変化だとは言えない。それは、完成させることに対して無責任だというだけかもしれない。やりかけの仕事をすべて拾い上げ、完成させることこそが、前向きの変化である。__ジョン・ロジャー
(デビッド・アレン「ストレスフリーの仕事術 仕事と人生をコントロールする52の法則」より)

 

周囲に一人はいないでしょうか。机の上に書類が山積みになって、たくさん仕事を抱え、かつ忘れてしまっている人。見かけは忙しそうなのですが、実際は大量の未完了タスクを抱えているので業務の進捗にあまり寄与できていない。

 

GTDのフローに落とし込めば相当楽になるはずなのに、ああもったいない、と思ってしまいます。その組織の構成員全員がGTDのフローに忠実に仕事をこなしていったら、もしかしたらスーパーハイパフォーマー勢揃いの組織になるかもしれませんね。

 

その第一歩としてまず自分からパフォーマンスを高めるため、タスク管理を是非ご一緒に。

「なるはやでチャチャっと」を理解してはいけない

月がきれいですね」
忖度という言葉が有名になりました。大雑把に言って「空気を読むこと」です。言葉にないものを察することですね。これが良い効果を生む場合があります。俳句なんかそうですね。言葉が醸し出す雰囲気を私たちは想像して、文字数分以上の広がりと深さを感じるわけです。

月がきれいですね」という言葉もその類かと。これは、夏目漱石が"I love you"を和訳した際の訳文なのだとか。もうこれは本当に粋で趣深い。いいもんですね。

 

 具体的な言葉が適さない状況
ところが、こと仕事に関するコミュニケーションについては、具体的に分かりやすい表現が必要とされます。「この部材の図面を明日の12時までに作ってよ」という内容を「太陽がまぶしいね」とか言って伝えようとしてもどだい無理な話です。この記事を読んで、そんな話が思い浮かびました。 

html5experts.jp

この記事では、エンジニアが仕事をする上で、コミュニケーションを具体的な表現ですることの大事さが書かれています。

エンジニアの世界では日常茶飯事で交わされている以下のセリフ。皆さんも聞き覚えがありませんか?

「これさ、なるはやでチャチャっと作ってよ」

「とりあえずいい感じに仕上げといて」

「なんかこれ、あんまり動かないよ」

実はこれ、澤さんいわく「マネジメントが欠けている状態」なのだとか。

 

私はエンジニアではありませんが、(言われた方で)身に覚えがありすぎますね。「なるはや」は頻出ワードですし、「いい感じに」も割とよく聞きます。

 

タスクは降ってくるものだという意識でいると仕事はできません。自分たちで定義して作っていくもの、権利だと考えるべきです。不得意なことは人に任せるという手もあるが、タスクを自分で定義することが大事。

 

仕事の指示は具体的に!と相手に要求するだけでは不足があると私は思います。そう考えると、上の記事はとてもしっくりきます。上司から雲をつかむような指示があっても、自分がそれを明確に定義するということも大事だと思います。

 

「キミ、あの昨日のアレだけど、なるはやでチャチャっといい感じに仕上げておいて」という、とてもファジーな指示が飛んできた場合、「はい、昨日お話があった当社株主リスト作成の件、株主番号と氏名、住所、保有数をまとめて明日の9時までにエクセルで作成してメール添付で私からお送りしますね」と返せれば自分で定義できたということになります。おお、デキるビジネスマン的な雰囲気がガンガンに伝わってきますね。

 
別にデキるビジネスマンになるためではなく、きちんとタスクを定義(エンジニアの世界では「要件定義」というらしいですね)することで、後になって「思っていたのと違う!」と言われないための、身を守るための手段でもあります。

 

そう考えると「なるはやでチャチャっと」に対して「はーい」と安請け合いしてはいけないということになります。いくら感覚的なこの言葉を理解してよ臭が上司から漂っていたとしても自分流に定義し直して、その定義にお互いが合意することが必要になります。

 

タスクの定義は、タスク管理で大事な要素です。仕事を進捗させるための「次にとるべき具体的な行動」を明確にするのがタスク管理の鉄則ですが、それはこの記事でいう「タスクの定義」「要件定義」と同じです。1つ1つ足場をしっかりして次に進んでいくような、そんなイメージです。チャチャっと系の脆弱な足場では怖くて前に進めません。

毎日安心して前に進むために、タスク管理を是非ご一緒に。