ForGetting Things Done

「水のように澄みきった心」で頭空っぽに。

自分の人生を「運転」する

「他人の人生を生きるな」
スタンフォード大学の卒業式で、卒業生に対しスティーブ・ジョブズが行ったスピーチの一節です。自分の余命というものを意識した後の話であり、その後数年で亡くなっていることから、鬼気迫るような迫力を感じます。人生は有限であり、本意でない人生を生きて時間を無駄にしないで欲しい。刺さります。

 

人生の運転席に座る
タスク管理メソッド”GTD"の開祖デビッド・アレンも、同様のことをその著書で記しています。

GTDの手法である、収集・処理・整理・実行をしているときに気分が良くなる理由は、なにもそれによって仕事が減るからではない。その作業をすることで、自分が人生の運転席に座ることができるからなのだ。
(デビッド・アレン「ストレスフリーの仕事術 仕事と人生をコントロールする52の法則」より)

 

「自分の人生を生きる」とは
自分のやりたいこと、やるべきこと、人によっては使命ともいえることを見出し、それを実現するための行動を決めて実行していくことだと思います。もっと言うと、ずばりGTDの方法論で生きること。デビッド・アレンの著作「Getting Things Done」は当初「物事を成し遂げる技術」とも訳されていました。業務管理ソフトやツールをそのまま適用することはできませんが、その考え方__収集・処理・整理・実行に表されるGTDのフロー__は大いに役立つと実感しています。

 

そうやって目的を見定めることができ、方向性が決まった人はブレないですよね。自分軸ができるので、他人の意見に左右されないでいられます。他人からは突き抜けてると評価されることもあるかもしれません。

 

GTDの方法論で思考して生きてみるのは案外面白いと思います。自分の人生のハンドルを自分で握ることができるのでお勧めです。

パンドラの箱を開けてしまう

生産性向上への興味!(キラッ)
タスク管理手法"GTD"の開祖デビッド・アレンの書いたコラムに「生産性向上に(本当に)興味のある人はだれ?」という題名の一文があります。

自分の人生を変えようと思って働いている人こそが、もっと自己管理を改善させようと思っている人なのだ。(中略)絶対優勝するぞ、と決意しているF1チームは何千時間、何万ドルというお金をかける。
逆に、自分を変えようと思っていない人は、目の前に最高の自己管理手法がぶらさがっていたとしても気がつくことがないだろう。競争をしているわけでもなく、何かを達成するつもりもなく、ストレスを解消する必要さえもなければ、何かを改善するために時間やエネルギーを費やすのは彼らにとって明らかな無駄なのだから。
(デビッド・アレン「ストレスフリーの仕事術 仕事と人生をコントロールする52の法則」より)

 

 

現状維持という生き方

事実として、とにかく現状維持さえしていれば良く、今いる会社にぶら下がって毎月給料をもらうという人は少なからずいると思います。その生き方を否定するつもりはありません。ただ、そんな人たちは会社にいる時間が苦痛でしかないだろうなと想像しています。給料は我慢料だという考え方があります。それもそうかもしれないと思います。組織で働くことは、我慢しなければいけないこともあります。

 

もうそこには戻れない
ただ、タスク管理で劇的な変化を経験してしまった身としては、もうそこには戻れないと思っています。自分の向上心に気がついてしまい、もっと面白く人生を送れないかと思い始めてしまうんですね。

 

嘘っぽくて暑苦しいポジティブさを感じるかもしれません。私もそのような類の方々は敬遠してきたのですが、タスク管理というパンドラの箱を開けてしまったのかもしれません。

実行したくなくなる業務タスク

「なんかやりたくない」
やりたいこと、やるべきことを書き出して「あ~あ、なんかめんどくさいなぁ」と思うことはありませんか。やらなきゃいけないし、積極的にやりたくなくなるような環境でもない(やって終わらせる度におにがやってきてやる前の状態に戻されるとか)のに、取り掛かることができない。考えてみれば不思議ですね。

 

「なんかやりたくない」という気分の根源
どのようなときに「なんかやりたくない」と思うか。経験上、何から手をつければいいかわからない状態のときにやりたくないと思うことが私は多いです。

経営者をコーチするときは、「長期的」と呼ばれているプロジェクトをまずは明らかにすることにしている。(中略)「長期的な」プロジェクトに関して私は訊く。「これらを達成するための次の行動は何ですか?」。
たいていの場合、彼らは答えを持っていない。そして、次の行動が決まっていないことについて、なんとなくきまり悪そうにこんな弁解をするのだ。「ま、でも、ほら、これは長期的なプロジェクトだから……」。

目標がどんな遠くにあろうと、本当に達成しようという誠実な気持ちがあるのなら、目標に近づくために今すぐできることが何があるはずだ。「火星旅行に行く!」というプロジェクトであっても、次にとるべき行動を決定することはできる。
(デビッド・アレン「ストレスフリーの仕事術 仕事と人生をコントロールする52の法則」より)

 

次にとるべき行動が分からないとき
やりたいこと、やるべきことに着手できないときは、上記のような場合であることがほとんどです。そして、そんなときに自分の中では何が起こっているかというと、大した動きがない場合が多い。

 

「やりたいんだけどッ!やれないッ!なぜだァッ!」といった自分の中での大きな葛藤でも生まれれば「取り掛かれていない自分」に対する危機感は否が応でも煽られます。しかし実際は、「うーん、ちょっとやめとこ」くらいの気軽さで取り掛かることをやめてしまう。そんな感じじゃないでしょうか。お気軽であるが故に、やろうとしたけど実行に取り掛かれないタスクが続出するんですね。

 

無理矢理にでも次の行動を設定する
やってみたいけど絵に描いた餅に終わりそうな気配濃厚なことは、とりあえず次の行動を無理矢理にでも設定し実行する。その繰り返しが、当初はできないかもと思っていたことを実現へと導くのではないかと思います。

 

人と約束をする。それに使う物を買ってしまう。場所が必要なものであればその場所を確保してしまう。そういった行動を1つ1つ重ねることで、いつのまにかグイグイ自分を実行完了まで引っ張って行ってくれます。

 

そのための方法論を自分で打ち立てるのは困難ですが、GTDのフローは「次にとるべき具体的な行動」を見つけて実行し続けていくことを強力にサポートしてくれています。実行したくなくなる業務タスクをかなりの数減らしてくれることうけあいです。

副業をする余裕はどこから?

副業をやる余裕なんてない!
仕事で疲れると副業どころではないですよね。副業するには本業の精神的負荷の上にさらに副業のそれが乗っかってくるわけです。それに耐えなきゃいけないんですが、なかなかできないですね。

 

多くの人は、本業の残業に追われてヘトヘトになっていると思います。仕事を終えても、常にあの案件のあの地雷が爆発しないか、明日職場に行ったら忘れていた仕事がその日締め切りという状態で口を開けて待っていやしないかと、いつも不安に苛まれる。そんな毎日を、タスク管理以前の私は過ごしていました。10年前くらいの当時、「副業」という言葉自体はありましたが、今ほど注目されてはいませんでしたし、私も会社の仕事をこなすのに精一杯で、副業をやる時間的・精神的・体力的余裕すべてがありませんでした。

 

副業をやる余裕を生み出すために
では、副業できるだけの精神的余裕を持つにはどうしたらいいか。仕事で消耗しなければ良いわけです。そのためには、「仕事を終えたらその仕事についての不安がない状態にする」ということが大事だと思います。そんな状態にはどうすれば到達できるのか。全ての仕事とその進捗を把握する、どれがどれだけ進んでいるか、そしてどれがどれだけ進んでいないかを把握すると不安がなくなると感じています。

 

不安はやりかけの仕事から生まれます。もっと厳密にいうとやりかけの仕事があってその仕事がどれくらい残り作業があるのかが不明な時に不安が生まれると言えます。そうでないときは不安にならない。このことを本当に実感しているかどうかが大事だと思います。

 

実は余裕をなくしているのは他ならぬ自分
会社を出たら実は今日が締め切りだったと気が付いたとか、どう考えても100時間必要なのに明後日までに仕上げなければいけないことが分かった、とかだったら話は別ですが、そうでない限りは、見通しのついていない仕事を抱えて自分で不安を作り出して自分を苦しめていることが多いと考えます。ちょっとしたこと、例えば「Aさんにメールを出し忘れた」ということを思い出しただけで最悪のシチュエーションを想像して頭が真っ白になってしまうようなことが多々ありました。自分で勝手に思い込んで自分の首を絞めているのですね。

 

自分を責める自分を排除する
以前とは違い、今の自分はそれがほぼありません。タスク管理ツールに全部の仕事を書き出しているので、ひょっと思い出してうわぁ!となる恐れがありません。お陰で会社を出たときから家族のこと、趣味のこと、そして副業のことを安心して考えることができるようになりました。タスク管理を始めてその効果に驚きました。

 

余裕を生み出した自分が行う副業
タスク管理を運用することで生み出した「余裕」を使ってやる「副業(会社の仕事とは別の活動の軸、みたいに考えて下さい)」は、タスク管理を広めることです。ブログを毎日更新していることから、余裕があるんだなくらいはお分かりいただけると思います。タスク管理でつくった余裕でタスク管理自体を広めるとは少々(?)奇特ではありますが、本業と副業が良い相乗効果を生み出しているなと実感しています。

固定化した優先順位リストは意味がない?

優先順位は常に変わる

固定化した優先順位にそって並べられたタスクのリストは作るだけ無駄だと思います。有効なのは、優先順位を決める時の自分ルール。「発生した順に対応する」「締切が近い順に対応する」「偉い人順に対応する」といったものです。

 

締切で判断するとA→B→Cという優先順位で業務タスクを実行することになっていたとします。しかし、Cを依頼してきた社長から「あーきみきみ、Cを早くして欲しいんだがね」と言ってきたとします。一般的なサラリーマンなら即座にC→A→Bへ順番が変わりますね。こんな風に優先順位は時々刻々と変わるので、「どうせ変わるんだから優先順位は決めても意味ない」と考えてしまい、タスク管理崩壊への一歩を進めてしまうのです。 

GTDは正しい判断ができるように準備をするための優れたシステムではあるが、究極的には「今、私がするべきことは何か?」という問いに答えてくれるものではない。
(中略)ランク分けした優先順位や、毎日のTo Doリストに魅力を感じてしまうのは無理もない。だが、現実はもっと厳しい。人生や職場において経験を積むにしたがって、扱わなければならない問題の複雑さも、捉え難さも、変わりやすさもどんどん増していく。そこには簡単な解決法などはないのだ。
(デビッド・アレン「ストレスフリーの仕事術 仕事と人生をコントロールする52の法則」より)

 

優先順位にすがりたい

優先順位付けをするととても気持ちが良くなります。ですが、それはその一時だけです。いったん並べたら上から順にそのまま何も考えず実行したいですね。しかし、リアルタイムで仕事の依頼を受ける場__特に会社なんかはそうですね__では、不変の優先順位通りに業務をこなすことはほぼ無理です。優先順位にすがることはできません。

 

せめて「今日依頼を受けた業務はなるべく今日しない」といったくらいしか、優先順位を守る術はありません。ここは潔く「不変の優先順位」を諦めるしかないでしょう。

 

変わり続ける優先順位に対応するためには、タスク管理ツールをリアルタイムで更新し続けることです。使用しているツールや職場環境によっては大変難しいのだと思いますが、なるべくそれができるように自分で工夫をすると良いと思います。

高くて困難な目標設定

目標設定理論
「明確で困難な目標を設定した場合、人は強く動機づけられ高い業績をあげる」というのが、目標設定理論の骨子なのだそうです。

globalbiz.hatenablog.com

ある組織が10日で完成したものを次は9日、その次は8日で完成させるようにしていくという流れは、その組織の生産性を上げていくものです。正しい。つけ入るすきがありません。

 

目標設定理論への違和感
でもですね、正しすぎるんじゃないかと思うんですね。この考え方には私は抵抗感を禁じえません。北海道の見渡す限り平原の一本道に横断歩道があったとして(多少無理な設定ですが)、その横断歩道の信号が赤のときに渡ろうとして、「待って!赤だよ!車来ないけど渡っちゃ駄目だよ!(目キラキラ)」と言われているような、そんな感じがします。

 

この理論は、適切な目標設定をすることでモチベーションを上げることを目標としているのだそうです。タスク管理界隈は「モチベーション」とか「意志力」を__少なくとも私は__信じません。やる気がアップすれば仕事の質などは上がりますが、確実にアップできる保証がないので、「モチベーションを上げる」ことに対して懐疑的にならざるを得ないのです。

 

むしろ、その業務タスクの所要時間の見積に余裕を持ち、タスク管理手法”GTD"のフローにしたがって処理していけば、結果的に生産性が上がるものだと考えています。そう考えると、目標設定理論はタスク管理と相反するような気がします。

 

GTD本の一節
そんなことを考えながらGTD本を読んでいると次のような言葉が目に飛び込んできました。

・大量の仕事が殺到しても、リラックスしつつコントロールできる能力

・あいまいな方向性や突発的なプロジェクト、はたまたさまざまな

 プレッシャーの中においても、実現可能な行動計画を立てられる能力

・大きな障害に直面したとき、望ましい結果と次に取るべき行動に

 素早く集中できる能力
(デビッド・アレン「ストレスフリーの仕事術 仕事と人生をコントロールする52の法則」より)

 

企業の社員研修では、GTDによって身に付けることができるこれらの能力の必要性を感じていないのか。そんなことをGTDの開祖デビッド・アレンは言っています。この各種能力についての言及(もっと列挙されていました)を読んだ瞬間に、目標設定理論に対する抵抗感は減りました。むしろ「明確で困難な目標」を設定されたときにこそ、その真価を発揮するのがGTDであると考えたからです。

 

なんて、私も目キラキラ系になってきているのかもしれませんが、GTDの方法論に慣れ親しむと自己肯定感が上がります。上記の能力は確実に得られると思います。GTDを日常的に実践していれば高くて困難な目標設定をされても安易に負けることはないかなと。

「タスク管理」で障害者就労移行支援~実・践・編~

「タスク管理」への序章

月1回「しくじり先輩」として、10年ほど前にしくじった私の体験を元に講演やワークをしております障害者就労移行支援事業所「EXP立川」さんに、今月も行ってまいりました。この事業所を運営している社会福祉法人「SHIP」の理事の方がタスク管理に理解のある方でして、タスク管理で就労移行支援をしたいという私の考えに賛同いただき、そのためのプログラムを組んでいただいております。

 

5月と6月は、お昼の時間帯(12:00~13:00)に、10分ずつ時間を区切って、その枠内に収まるよう「お昼休みに行う予定タスク」を書き出してもらい、お昼休み終了時に予定通りタスクをこなすことができたかを振り返ってもらうということを、利用者さんに行っていただきました。 

hochebirne.hatenablog.com

 

ついに本腰をいれたプログラムへ!

今月の「しくじり先輩」は、今までのお昼休みタスク管理をもとにした、より実践的な場面を想定した「仕事のタスク管理」を行うことにしました。

 

全体を2~3人のグループに分けて、それぞれに事業所のスタッフが上司役として、仕事の指示を出します。そして、①指示を書き出し、②細かい段取りに分け、③細かい段取りを業務時間1時間を10分ずつ6つに分けた枠にはめこんで予定を立てるということをしてもらいます。①②③それぞれに応じた紙のツールを用意して、そこに書き込んでいくことで自然と目的が達成できる、という流れにしました。「タスク管理」とか「GTD」といった言葉は使わずに、でも結果的にその内容を実践しているようなツールを作成しました。

 

グループ分けをして、ツールの使い方を説明しよく理解してもらった上で、上司役からの仕事の指示が飛びます。そして、ツールに書き出してもらい、「ルームAの掃除」「ルームBの掃除」「しくじり先輩アンケートの作成」「トイレの備品在庫表作成」といった、本当に事業所のスタッフがやる仕事を、実際に利用者さんたちに行っていただきました。

 

動きが変わった!

ここの事業所は、基本的にニコニコ明るくのんびりとした雰囲気が特徴だと私は思っています。しかし、今回のワークを「では開始!」となると、皆さん人が変わったようにキビキビと動き始めました。ちょっとびっくりでした。就労移行支援を目的としているので、再び仕事を始めたくて通っているので当たり前なのかもしれません。その活気の中にいると逆に私の方が奮い立たせてもらえるような、そんなエネルギーがありました。

 

タスク管理ツールは使いこなせたか

私の最も注目していた(タスク管理の)ツールは使いこなすことができたかどうか、ですが、少なくとも書き込んでその通りに行っていたように見えるので、働きかけは成功だったと思います。同じようなワークを柔道の乱取りのように繰り返しやっていけば習慣になるという手応えを感じました。

 

振り返り

午後に行った振り返りでは、タスクの分解表をちゃんと書く重要性や、わざと曖昧にしか指示を出さない上司役に対して具体的にイメージできるよう質問を繰り返すことが大切であることなど、タスク管理の大事な部分を肌で感じてもらえたと思っています。

 

タスク管理の基本的な考え方の枠組み、フレームワークを自分のものにして、是非今後に役立てて欲しいと切に願っています。そして、EXP立川でのこの取り組み「タスク管理×福祉」が、もっと広って欲しいと強く思っています。