自分も相手も納得いく「なるはや」対応をするには?
今年4月に発売したF太さんとの共著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」では、「なるはや」という言葉の扱い方についこんなことを書いてるんですね。
これだけ読むと、徹底的に自分に有利な条件に持ち込むために虎視眈々(こしたんたん)と手ぐすね引いて待ちかまえているような印象を受けるかもしれません。すきあらば相手をおとしめようとするような、食うか食われるかの交渉のように思えるんじゃないでしょうか。
ある意味仕事上のやり取りは交渉的な側面があります。何でもかんでもハイハイいっていたら、たくさんの仕事を押し付けられて身を持ち崩してしまいかねません。ある程度は引き受け、またある程度は受け流す必要があります。
だからといって、職場でのすべてのコミュニケーションは交渉だ!戦場だ!気を抜いてはならぬ!と身構えるのは残念だなぁと思います。これまた身が持ちません。
自分に無理なく、でも相手にも配慮した「なるはや」の締切設定をしたいところですね。
この本でいう「手順書」を繰り返し作り続けていると、「この類の仕事は、まずこれをやればいったん手離れするな。それにはこのくらいの時間がかかるな」と分かってくるようになりました。最初に手離れするまでというのがミソです。その仕事が終わるまでではありません。
現代における、いわゆる「仕事」は、1つやり終えてその次に取り掛かって……を毎日繰り返すようなものではないことが多いです。「マルチタスク」というやつです。
マルチタスクへの対処は「細かく刻んで誰かにパスする」です。いくつものタスクの細かい作業を1つやって誰かにパスして、また別のタスクの細かい作業をやってまたパスして……の繰り返しです。
えーと、なんでしたっけ。そうそう。「なるはや」案件の締切日をどうするかでしたね。
私が考える理想的な「なるはや」への対処法は、
なるはや案件をいつどのくらいの時間でできるかを、ある程度の精度をもって予測できるようにしておいた上で、ほんの少し余白を加味して相手に締切を伝える
です。ただ単に「今日すぐに終われそうだけど、大変そうだからなんとなく10日後っていっちゃおう!」といったどんぶり勘定は、ちょっとやりすぎかなと思ってます。
「ある程度の精度をもって予測できるようにするだなんてどうすればいいの?」とお思いかもしれません。上に書いたように、私は手順書を繰り返し作り続けていた結果、完全ではないながらもこうした予測がしやすくなりました。言い換えると「スケジュール感を鍛えることができた」といえます。
手順書作りでスケジュール感を鍛えるというテーマでも以下のように書いています。
「こんな時間のかかる方法ではなく、もっと手っ取り早く締切日予測をしたい」という方には、パッと思いついた締切までの期間を自動的に3倍する3倍ルールをお勧めします。かなり精度は落ちますが、短い締切期間を言って泡を食ってしまうよりは良いと思います。
この本でいうなるはやへの対応は、特に「相手の期待に応えようとしすぎて、無理な締切の約束をしてしまいがちな人」のために書きました。
そんな方は、スケジュール感を鍛えるか3倍ルールを使ってなるはや対応をしていくと、自分も相手も納得いく進め方ができると思います。
タスクの形ってどんな形?
みなさん、「仕事」といわれて頭にどんなものを思い描きますか?
仕事のみならず、何かを想像するときは、人によって文字だったり図形だったり色々だと思います。私は比較的画像(映像)で思い浮かぶタイプです。
ある種の情報を、自分が理解しやすいように、ある枠組に当てはめることがあります。私はこれを思考の枠組み「フレームワーク」だと考えています。
「考えるべきポイントをパターンとして落とし込み、誰でもできるようにしたもの」
フレームワークとは〜思考時間を短縮して成果を上げるビジネスフレームワーク9選|ferret
私は、今取り組んでいる全ての仕事をある1つのフレームワークに落とし込んでいます。
こちらです。
拙著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」のCHAPTER1でご紹介している手順書です。
私にとってタスクはこんな形です。頭の中でこの枠組みが思い浮かび、枠の中にタスクの名前や締切日など必要な情報をポコポコ入れていきます。
「この形!」と決まれば、自分の理解も進みやすくなり、そのまま書き出して他人に説明することもできます。
私の経験上、仕事の指示を受けたときに頭の中でこの形で手順書が作成されていくようになるにつれて、「どうしたらいいか分からない」といった不安を感じることが格段に減りました。逆に、手順書に落とし込めれば勝てる!(タスクを完了できる!)という自信が湧いてくるようになりました。
タスク管理メソッド”GTD”では、「信頼できるシステムに情報を預けよう」といっています。信頼できるとは、まさに手順書に落とし込めれば勝てるという自信がある状態だと思います。
もちろん、諸般の事情でタスクが完了できなかったものもありますが、こうして自分なりの勝ちパターンを持っておくと、大変精神衛生上よろしいものです。私と同じ形でなくてもいいですが、「私のタスクは、こんな形です!」と即答できるようになると、とても仕事がやりやすくなります。
着手しやすい魔法の言葉「たたき台」
仕事の早い遅いは、「スタートしてからのスピード」ではなく、「いかに早くスタートするか」だと思います。
まれに頭の回転がド級に速い人がいますが、まずは例外として除外した方が良いです。少なくとも自分の競争相手には選ばない方が良いです。
いかに早くスタートを切るか。気合いと根性でスタートできる人はそれで良しです。ただ、最初から最後まで気合いと根性で乗り切ろうとしたら、息切れしてしまうのではないかと私は思います。
そこで、着手するハードルを下げるのを大いにお勧めします。そのハードルを下げる魔法の言葉が「たたき台」です。
「取引先に出す夏休みのご案内のたたき台、作ったんで送ります。修正ありましたら今週中にお知らせください」
「今期のコスト削減提案、まだたたき台レベルですが現時点でご指摘ありましたらお願いします」
こんな感じで使います。
仕事が遅い理由の1つに、完成度を高めるために自分の手元で温めすぎてしまうというのがあります。常に100%の出来映えで提出したいという願望によるものです。
自分1人の視線では、0%のものを60%の出来映えまで持っていくのは比較的簡単ですが、60%を100%まで持っていくのは相当大変です。そこで、60%の段階で他人に見てもらって意見をもらうのです。
さらに、こうして人を巻き込むと、「うん、これでいいよね」という雰囲気を作ることができます。
ただ、「まだ6割の出来なんですが……」というのは抵抗がありますね。「たたき台」はそんなときに使える便利な言葉なんです。
もちろん、たたき台に修正意見をもらったら反映させて完成させる必要はあります。ただ、自分だけで100%の完成度を目指してウンウンうなっているより遥かに仕事の進みが早くなる気がします。
不安になったらやりたい2つのこと。
約2ヶ月強ぶりのごぶさたです。皆さま、コロナ禍をどうお過ごしでしたか?
私は、4月のメンタルダウンからの回復に約1ヶ月半かかりまして、やっと8割5分程度回復してきたところです。
メンタルダウン経緯はこちらを。
そんな中、4月に発売しました拙著「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」は、「発売たちまち重版! 3刷2万8千部突破! 」(Amazonの紹介文より)とのこと。ありがたいことです。
そんな気分が上がるような出来事に支えられて、やっとブログが書けるまでには回復してきました。
最近こんなツイートをしました。
あかはなそえじ先生の動画がとっても良いです。
— 小鳥遊@「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」発売中! (@nasiken) 2020年6月17日
不安に対して取るべき姿勢は2つ
・立ち向かう
・離れる
立ち向かうとは「言葉にして」「正しく理解する」こと。
これを聞いて思いました。タスク管理メソッド"GTD"の「把握」「見極め」そのものですねー。https://t.co/m3M6MfGrpR
なお、紹介動画が間違っておりまして、正しくはこちらです。
ああ、貼る動画間違えた……。
— 小鳥遊@「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」発売中! (@nasiken) 2020年6月17日
こちらです。https://t.co/Hj9aUuUgo3
タスクとして書き出したらそれだけで終わってしまい、結局タスクに取りかかれない
そんなことってありませんか。きっと多いと思います。タスクって「不安」そのものなんです。そんな不安を抱えるあなたのためにタスク管理がお役に立てるかも……できたら立ちたいなと。
拙著ではタスク管理を「手順書(づくり)」といっています。その本質を5つのステップに分けて説明します。その最初の2つが、先のツイートにある不安への対処法「立ち向かう」の「言葉にして」「正しく理解する」なのです。
STEP1「名前をつけて書き出す」
STEP2「タスクの手順を書く」
そして、こんなツイートもしました。
先日、スクールカウンセラーなどをしている公認心理師の方とzoom会。
— 小鳥遊@「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」発売中! (@nasiken) 2020年6月16日
拙著 #仕事術図鑑 を読み「仕事以外の場面でも役に立つ」と感想をいただきました。
同時に、仕事以外へ適用させる「翻訳」が必要だとも。たしかに。
まずはその方からの質問に私が翻訳して答えるということから始めます。
別の方からも「仕事術の本なのに、心理的な側面への言及がある」との感想をいただきました。
この「手順書づくり」は、タスク管理メソッド"GTD"がほぼベースになっています。GTDの対象を仕事に限っていません。極端な話、生きていくこと全般に有効なんですね。だからこそ、仕事以外にも活用できるとの声をいただけるのだと思います。
自分自身も、タスク管理を境にして変わった気がします。この思考パターンで取り組めば進められる!解決できる!という自信がつきました。
ご紹介した「あかはなそえじ」先生の動画のおかげで、その自信がより強くなった気がしました。
ということで、不安への対処法としても「手順書づくり」が役に立ちますよー!というお話でした。
メンタルダウンへの一番確実な対処法。
こんなツイートをしました。
あれですよ、、、まさに自分が「要領がよくないと思い込んでいる人」ですよ。。。
— 小鳥遊@4/7発売!「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」 (@nasiken) 2020年4月8日
なので、この本に書いてあることを実行して、私はなんとかやっていけてるんです。
同志の皆さん、しんどいこともありますが、くさらず無理せず背伸びせず調子に乗らず、やれることやっていきましょう。 pic.twitter.com/36GfqnZRPW
この記事を書いている現在、立て続けにミスをやらかしております。周囲のサポートで事なきは得ておりますが、なかなか辛い精神状態であります。ただただ周囲に感謝しかありません。
何が辛いって、自分ではどうしようもない(と思っている)ミスであることです。しかも、ミスがミスを呼ぶ連鎖にはまっており、満身創痍の身にさらに槍でグサグサやられているような感じです(多少大袈裟ですが…)。
頑張らないといけない!と思って、できもしない「忘れない・ミスしない自分になる」努力をしてしまうとさらにダークサイドに堕ちていってしまうのは、経験上分かっております。こんなときは、いくら考えようと思っても頭が働かないんですね。
より自分の状態を客観的にみて、それを起点に対策を考えることが大切になると思っています。ちなみに、「自分の状態を客観的にみて」とは今自分は何やってもミスしてしまうと考えることです。
月並みですが、例えばダブルチェックなりツールに入力してから仕事に取り掛かることを徹底するなりで、とりあえずは仕事が続けられるようにはなると思います。
自分にとって大変なのは、そんな状況で落ち込んだ気持ちをどうするか。冒頭のツイートに書いたとおりではあるのですが、具体的にどうすれば良いか。先日の記事にも書きましたが、この本の「メンタルが弱い」の冒頭にあるF太さんの文章をよりどころにしております。
落ち込んでいるときには「今はメンタルが成長しているんだ」
と、自分を信じてゆっくり回復を待ってあげてください。
そして、あとはじっと時間が過ぎるのを待つ。本には「これですぐにリカバリー!壊れたメンタルの回復法!」みたいな内容はありません。ホイミやケアルみたいな呪文は現実には無いわけで、ただひたすら待つのが安全で確実な対処法だと思います。
そんな感じで、「こういうときどうすればいいのかな?」と早速私自身この本をあてにしております。
「自分を受け入れる」とは?
自分を受け入れると断然生きやすくなる。このことを、私は大きな実感を持って言えます。でも自分を受け入れるとはどういうことなのかはあまり理解されていないのではないでしょうか。
こちらの本では、物忘れが多いという悩みに対して記憶はデジタルに外注しようとお伝えしています。
物忘れは起こって当然。
いっそ割り切って、物忘れの多い自分を助けてくれるものに頼ってください。
短期記憶の無さに絶大なる自信があった(つまり、記憶することにほとほと自信をなくした)私は、物忘れしない自分になることを諦めたからタスク管理に出会うことができたのです。これが私なりの、自分を受け入れた経験です。
言い方を変えれば、みんなそれぞれスタート地点が違うのを認めるということでしょうか。
100メートル先にゴールテープがあるとして、ある人は0メートルのところから、またある人は10メートル進んだところから、そして自分はマイナス10メートルのところからスタートを切らなければいけない、という風に。
100メートル走なら「じゃ、ここから走りだそっか」と、スッと認められる気がします。
しかし、それが現実の個人差の話にすり替わった途端に「自分は0メートル地点からスタートしてなきゃいけないのになぜ!?」とその場で地団駄を踏みがちではないでしょうか。はたから見たら、そんなことしていないでさっさと走り出せばいいのにと声をかけたくなります。
自分を受け入れるというのは、このように「自分の置かれているスタート地点を認識して走り出す」ことだと思います。
とはいえ、マイナス100メートルのところから走り出さなきゃいけなくなったら、さすがに心が折れてしまうかもしれません。仕事がうまくいかずミスを重ねて、「なんで自分はこんなハンデがあるんだ…」と心が折れたこともなくはないです。
ただ、私にとってその100メートル走は自力で走らなければいけないというルールは無かったんですね。自転車やバイク、車も使って良かったんですね。自力で走らなきゃいけないというのは、思い込みでした。
ここでいう自転車やバイクなどにあたるのは、上に挙げた本でご紹介している仕事の進め方(タスク管理)のことです。
スタート地点の遠さを嘆いて走り出さないことより、スタート地点がどこであれ自分の取り得る最速の手段でゴールへ向かう方がきっと楽しいです。
自分を受け入れることを物忘れをしない自分になることを諦めると書きました。「諦める」という言葉には消極的な印象があります。しかし、そのときの自分はネガティブな思考をしていたかというとそうではありません。
少なくとも、100メートル走のゴール地点の方を向き、走り出そうとしていたので、文字通り前向きだったと言えます。マイナスの位置からのスタートであるかどうかは関係ありません。
0メートル地点からスタートしなければ!と考えると途端に難しくなってしまいます。それに比べれば自分のスタート地点を客観的に見るのは簡単です。
あとは走るのみ!しかもバイクや車を使ってよし!と考えられるようになると、断然生きやすくなるのでとてもお勧めです。
本を「本」以外のものとして売る。
本を本として売るのはもう時代遅れだなどと申しますが、たしかに、昔に比べれば本を読む時間はテレビやスマホに取って代わられている感があります。
そんな中、この本をどう売ればよいのかを考えてみました。
この本の出版元、サンクチュアリ出版の編集長、橋本さんはこのようなnoteを書いています。
先日、電車で一人客がなにをしてるか、
かずを数えてみたら
90%スマホ、5%が目を閉じている、
残りの5%が「虚空を見つめる」「競馬新聞」「参考書」「マンガ雑誌」「本を読む」のどれかでした。
スマホが増えてるのは当然だと思ってたけど、
もう「本を読んでる人」は一車両に一人いるかいないかって状態になっていることには驚きました(地域差はあると思いますが)。
みんないったい、いつ、どこで本を読んでるんだろう?
そうですね。
私、電車内で本を読むことなんて年単位でも数えるくらいです。
とはいえ、売り方次第で本はたくさんの人に読んでもらえます。印象的なのは、SHOWROOMの社長前田裕二さんが書いた「メモの魔力」。100万部売ることを目標に、前田さんみずからSNSで読者とコンタクトをとり、販促にいそしんでいます。ただでさえ忙しいはずなのに、その努力たるや目を見張るものがあります。
また、キングコングの西野亮廣さんが出版した絵本「えんとつ町のプペル」。絵本の特性を生かして、売れる導線を見事に描いています。その特性とは以下のもの。
- ベストセラーになると長く売れ続ける
- 絵本は「読み聞かせ」需要がかなりある
- 読み聞かせ本を選ぶ際、ハズレはひきたくない(だから、ベストセラーばかり売れ続ける)
そこでえんとつ町のプペルを売るために採った方策は、絵本全文公開というもの。あらかじめ絵本の中身をネット上で立ち読みできるようにしています。絵本を買うのはほとんど親。自分が本を読むためにというよりは、子供に読み聞かせする時間のために買います。
こうなると、えんとつ町のプペルは絵本というだけでなく、子供に読み聞かせをするためのコミュニケーションツールにもなります。親としては、子供と一緒にいられて、しかも喜んでくれるものは欲しい。無理矢理押し付けてくる感じのない、良い売り方だと思います。
では、この本は読者さんのどのような行動を想定すれば良いのか。
私は、この本をぜひ「お守り」として考えて欲しいと思っています。
この「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」は、自分の経験から「こんな風に仕事をすすめるとラクですよ」という話をするイベントから端を発しています。読者さんはおそらく書いてある内容をそのまま実行したり、部分的に生かしたりすると思います。
そうしていくうちに、本が自信の源になっていくと嬉しいなと。
本の中身は、大別して「仕事の進め方の基本」と「個別の仕事術のヒント」に分かれています。本の内容を実践していけばいくほど、落ち着いて仕事に取り組めるようになるように書きました。だから、最終的には「中身は全部知っていて読むことはないけど、持っていることで自信が湧く」という存在になったら、私にとっては最高です。
ということで、本という体裁をとっていますが、ゆくゆくはお守りとしてお持ちいただきたいと思います。