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ForGetting Things Done

「水のように澄みきった心」で頭空っぽに。

自分の感覚を過信しない

自分の感覚と正しい音楽

私は趣味で楽器をしています。アマチュアオーケストラで活動しています。オーケストラ作品は大好きです。

 

オーケストラ作品は、指揮者によって魅力が全く違います。指揮者はオーケストラを操り「この作品のここが良いんだよ!」と多少のデフォルメを交えながら聞かせてくれます。

 

それと同時に、オーケストラは人間ですから、人間を操って曲に合うような正しいリズム、音量等で演奏させなければなりません。

 

人間は、楽譜通り規則正しく演奏していると思っていても、感情の盛り上がりや体調によって無意識に変化してしまいます。

 

上手い演奏とは

いきなり難しいテーマですが、少なくとも演奏者個々人の事情で勝手に音量が下がったりリズムが速くなっていったりということは避ける必要があります。そのためには、まず自分の感覚を疑ってかからなければいけないということになります。

 

クライバーの「ベト7

カルロス・クライバーという名指揮者がいました。1回の指揮の報酬が莫大なために、年に数回しか仕事をしないという天才でした。彼が指揮するという噂が流れれば皆こぞってチケットを買い、すぐに売り切れるような、カリスマ的な指揮者でした。

 

その彼が、アムステルダムの名門オーケストラを指揮して、ベートーベンの交響曲第7番を演奏した時の記録がYouTubeに上がっています。"kleiber beethoven 7"と入力して検索すればその動画が一番上にヒットします。この演奏に、彼の名指揮者たる所以が分かる部分があります。

 

第4楽章のスキップリズム

この曲の第4楽章で、ひたすら弦楽器がスキップリズムを刻む箇所(動画の29分2秒から)があります。この時の彼の指揮を是非見ていただきたいのです。

タッタ!タッタ!タッタ!タッタ!タッタ!タッタ!と、軍隊の行進よろしく威厳と熱量をもった弦楽器軍の全奏です。

 

最初のうち、クライバーは指揮をほぼしていません。じっとかがんで軽く握った左手の握りこぶしを小刻みに動かしているだけです。でもこれは職場放棄にあらず。世界でも屈指のオーケストラに任せているんですね。

 

ところが、このスキップリズムの部分の最後の一小節にさしかかると全身で「オリャッ!」とオーケストラをけしかけるのです。オーケストラはそれに応えて、このスキップリズムの部分はしっかり締めくくられます。でも、なぜ最後だけなのでしょうか。

 

ちなみに、このクライバーという人、この世に存在する/した指揮者の中でも1、2位を争う「美しい指揮をする」指揮者であると思います。特にオーケストラで演奏したことのある人が「ここでその動きをするのか!?」と惚れ惚れするような指揮をします。カッコいいのです。ただのおっちゃんなのに、指揮姿は男の私でもため息が出るくらいカッコいい。仕事をする時の営業部の誰々さんはカッコいい!とかそういうレベルじゃないんです。彼にベートーベンの交響曲第7番を指揮してもらえるならいくら出しても悔いはありません。もう亡くなってしまったので叶わぬ夢です。

 

話が過ぎました。元に戻ります。

 

人間の感覚を疑う

人間は単調な行動を繰り返していると、必ずダレてきます。いくら気を張っていても、最後には緊張感が失せて来るのです。それを十分に分かっているクライバーは、最初はオーケストラの自由にやらせ、終盤にオーケストラが意識せずにリズムが甘くなったり音量が保てなくなるのをフォローしているのです。名指揮者は人間離れした孤高の変人のようで、実は人間観察がしっかりできている常識人の一面も持ち合わせているものなんですね。

 

いくら名人揃いのオーケストラでも人間ですので、そういった「自然に聞かせるための人工的な調整」が必要となるわけです。

 

人工的な調整

さて、ここまで長々と指揮者クライバーの話をしてきたのは、音楽であれ仕事であれ何をするにも自分の想定と現実とのズレを受け止めてそれを調整することが大事だということが言いたかったからです。

 

オーケストラ内でどうしても発生してしまう、人間だからこそのリズムのズレなどを、指揮者は指揮台の上でリアルタイムに的確に捉えて修正するという仕事をしています。

 

自分の中でも、そのようなズレは必ず生じます。5分で終わると思っていた仕事が30分もかかったりします。自分の中に指揮者がいて「キミはこれを5分で終わらせると言っているけど、30分かかるからね!」と指摘してくれて1日の流れを作ってくれるとありがたいですよね。

 

タスク管理、特に時間管理を旨とするTaskChuteのようなツールは、指揮者役を買って出てくれます。ズレを明示してくれて、人工的な調整をする機会を与えてくれます。

 

複数人で音楽をする時に、楽器は上手いのに周りの仲間と合わせるのがうまくいかない人は、このズレに無頓着であることが多いのです。仕事の時間の見積もりがうまくいかず残業したくないのにしてしまうという人は、自分の感覚と実績とのズレに目を向けるといいかもしれません。