自分のトリセツは、たった一行。
自分の取扱説明書
仕事をする上で、自分の取扱説明書__トリセツ__は作った方が良いと思います。
いざ仕事を始めて、周囲の人に自分をなるべく理解してもらい、スムーズに仕事が進められるのは、お互いにとってありがたいものです。
私が今の会社に伝えたトリセツは、
怒らないでください
という一行のみです。
トリセツの内容を要求できない問題
トリセツの内容は、「自分はこれができます」「自分はこれが苦手です」といったものになるかと思います。
- 契約書レビューの実務経験が5年あります。
- 200名程度の事務所移転の経験があります。
- 経理財務領域の仕事はちょっと苦手です。
こんな感じでしょうか。
とはいえ、会社の指示であれば、苦手なこともやらなくてはいけない場合があります。また、そもそもそれは苦手と言っても克服すべきだろう、というツッコミが入るのもあります。
恥ずかしながら、私は面接で「苦手な仕事はありますか?」と訊かれて「締切のある仕事はちょっと……」と答えて苦笑されたことがあります。
締切のない仕事はないですよね。「私は御社で働く気がありませんが、給料はください」と言っているようなものかと。
そこまでではなくても、自分から会社に対して一方的にああしてください、こうしてくださいとお願いするものなので、内容が多くなるほど、トリセツを受け入れてもらうのは難しいと思います。
会社の義務「合理的配慮」
障害者就労移行支援事業所EXP立川で私が定期的に行っている講座に「オープン・クローズ どっちなんだい!?」というものがあります。
一般雇用(クローズ就労)と障害者雇用(オープン就労)について理解を深め、どちらで就職するかを利用者の方々に考えてもらう講座です。
そこで大事な論点が「合理的配慮」です。
障害特性をカバーするために会社は就労者へ配慮する義務があります。ただし、合理的な範囲でです。
極端な話、「私は常時4人のマッサージ師がつかないと落ち着いて仕事ができません」という人にマッサージ師を4人雇って付き添わせるのは合理的でないので、配慮する義務はありません。
配慮すべき事項を絞り込む
合理的配慮は、ほぼトリセツに近いものだとお分かりかと思います。であれば、就労側が配慮して欲しい事柄を列挙すれば、トリセツが出来上がりますね。会社はその通りに接すればよいわけです。
ただ、例えば家電製品の取扱説明書が想定外に分厚かったらウンザリしますよね。それと同じで、「あれも」「これも」「それも」という配慮事項が100ページも書いてあったら、その人と仕事をしなくてもいいや、と会社側は考えると思います。結婚式のスピーチとトリセツは短ければ短いほど良いのです。
そこで私は、仕事をする上での懸念事項から「これは自分でできる」というものを削除していき、残った1つの配慮事項のみを伝えました。それが「怒らないでください。提案という形で伝えてください」というものでした。
消し込んだ懸念事項
では、その他の懸念事項はどうしたか。それは放置するのではなく、「自分でなんとかする」と考えました。「これらは自分でなんとかしますので、1つだけ配慮をお願いします」と言われたら、「それのみ配慮すればいいのか」と会社側も気が楽になるかと。
それでは、実際どんなことを自分でなんとかすれば良いのか。
精神障害、発達障害のための合理的配慮の事例が厚労省の合理的配慮の指針に列挙されており、その中にほぼタスク管理な項目がありました。
業務の優先順位や目標を明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順を分かりやすく示したマニュアルを作成する等の対応を行うこと。
業務指示やスケジュールを明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順について図等を活用したマニュアルを作成する等の対応を行うこと。
私が「自分で何とかする」として消し込んだのは、この部分です。
最後に
実際、自分は仕事を進める方法としてGTDを実践できてはいるものの、強く注意されたり否定されるような形で指導されると、頭が真っ白になって、下手したら数日引きずります。そのことは業務に支障をきたします。そこで、上記のようなお願いをするに至ったわけです。
合理的配慮を全て会社側に求めるより、ある程度は自分でなんとかしますという人の方が、会社としては雇いやすいです。
また、合理的配慮を全て受け入れてくれた会社があったとしても、周囲にいる人のうち一人でもその理解がなければ、途端に働きづらい環境になってしまいます。
働きやすい環境はできるだけ自分で作るのが、生きづらいタイプの人にとっては、一番の生存戦略なのではないかと思います。