モーツァルトのタスク
音楽というのは感覚的なようで、実はとても論理的・数学的です。
特にクラシックのオーケストラ作品は、曲想が浮かびそれを展開し、和音をつけ、リズムをつけ、という作曲タスクがたくさんある楽器の数だけあります。
良い曲想が思い浮かぶかどうかがまず難易度の高いタスクですが、それ以外にも、曲をどのような構成にするかも、作曲家の腕の見せ所です。
また、ことオーケストラ作品になると、その曲想や和音、リズムをどの楽器に演奏させるか、どのように重ね合わせるか、あれやこれや作曲家は思いを巡らせ、1ページ十数段にもなるスコア(総譜:オーケストラ全部の楽器の楽譜が全部書いてある楽譜のこと)を作り上げます。
GTD式に作曲を進めていくとすれば、
①第1主題を考える
②それにつける伴奏(和音やリズム)を考える
③その他の要素(副旋律や単なる合いの手)を考える
④主題を担当させる楽器を決める
⑤伴奏を担当させる楽器を決める
……きりがないです(笑)
これでもほんの一部です。無数のこういったタスクを、才能を駆使して作曲家はこなしていって、作品を作り上げるのです。私が今やっている事務仕事なぞ簡単過ぎて霞んでしまいます。
かの有名なブラームスなどは、その慎重な性格からか、最初の交響曲を書くのに、試行錯誤して20年(!)も時間をかけました。
クラシック音楽を作るというのは、このように、たくさんのタスクを実行して、長い時間と手間をかけて遂行するものです。
ところが、たった2つのタスクを実行するだけで曲を作ってしまう作曲家がいました。
①曲が思い浮かぶ
②書き写す
これだけです。
これじゃデビッド・アレンも真っ青。タスク管理のやり甲斐が無いですね(笑)
その作曲家がモーツァルトです。
神童と名高い彼は、曲を書こうと思ったら、次の瞬間には楽譜の最初から終わりまでもう見えたらしいんですね。
だから、あとはそれを現実の五線譜に書きとめるだけの簡単なお仕事だけ。実際、彼の自筆譜には、書き直しの跡がありません。そして、それらは軒並み後世に残る名曲。開いた口が塞がりません。
タスク?何それ?
そんな台詞が聞こえてくるようです。
天才にはかないません。