「『できません』と言わない」
「できません」は言ってはいけない?
以前、総務専任として働いていた時に先輩から言われた言葉が「できませんは言わないこと」でした。
確かに総務は会社の駆け込み寺のような要素があるので違うとは言えませんでした。転職する時も、総務の仕事をアピールするには、「できない」とは言わずに何とかやり遂げたことの話をしていました。
実際、困った時の総務頼みという役割を果たしていることに満足感を覚えていました。誰も手をつけたがらない仕事をかって出ると、とても感謝されます。だから、できないと言わないことは自分の勲章だと思っていました。
その考え方が自分を蝕んでいく
社内ではとても重宝されるであろうその考え方、実は身をもち崩す原因でした。できないことはできないという当たり前のことを受け入れず、どんな手間をかけても、どんな些細なことでも、極端な話、誰から何も言われなくてもやるべきだ!と思ってしまったんですね。
私は社会に出るのが遅かったもので、その分の遅れを取り返さないといけないと思っていまして、振られる仕事、やらなくてもいいかもしれない仕事、とにかく全部掘り起こして全力でやりました。仕事ができる、会社の他の人たちに貢献できるということが純粋に嬉しかったのです。
開きっぱなしのリスト
仕事が発生する端からホイホイ引き受けて追加していくものですから、あっという間にTODOリストは膨れ上がっていきます。「今日はここまで!」と閉じることはしませんでした。
履歴をとらない
さらに、やった仕事の進捗や完了したかどうかの履歴も残さずに、辛うじてメモしているノートを見てしばし唸って思い出しては、仕事の確認をしていました。今考えれば恐ろしいことです。
「できません」と言わないことの本当の意味
当時の先輩が言っていた「できませんと言わない」の本質は、「頭から全否定しない」ということなんだろうと、今は思っています。頭から全否定しなければ、最終的には「できない」と言っても良いわけです。
例えば、無理難題を押し付けられても「そんなん無理っすよ!」とはねつけるのではなく、「それは難しいですが、これならできます。ちょっとやってみましょうか?」と対案を出すとかですね。仕事に対する基本姿勢ではなく、言い方・コミュニケーションの取り方についてのアドバイスだったんだと思います。
「できない」というためには
ところが、「じゃあ、どのへんでできるかできないかを区別するのか」を分かるのは結構難しい。それこそ以前の私のように「自分にはなるべく仕事を断らない職責がある」と考えている場合は、区別する基準がありません。
その後私は「どこかでできないラインを引きたい」と考えるようになりましたが、どこに引けば良いのかが分からず、途方に暮れていました。
その後タスク管理を知り、「できません」と言うには自分が抱える仕事がどれくらいあるのかをまずは把握しないと始まらない、という事実に気が付きました。 さらに、それらの締切がいつであるかも把握すれば、今新たに仕事を依頼されたら引き受けられるかどうかのおおよその目算が付くこともわかりました。
こうなって初めて「できません」と言えるようになったな、と感じています。社会に出て「『できません』と言わない」というアドバイスを初めて受けてから10年弱、あまりにも遅い気付きでした(笑)
今後は、言い方に気を付けつつ、できない時はハッキリ「できません」と言っていこうと思います。