10年前、代々木体育館での障害者雇用合同面接会のこと
代々木体育館の記憶
今から10年ほど前、仕事がうまくできなくて思い悩んで自身を完全に喪失し、障害者手帳を交付してもらって障害者雇用で再起を図ろうとし、障害者雇用オンリーの合同面接会があるということを知って勇んで行きました。会場は代々木体育館。開場前から長蛇の列でした。
精神障害者雇用の記事を読みました
なぜこんなことを書き始めたかというと、この記事を読んでインスパイアされたからです。いい記事です。今から精神障害の障害者雇用で就職活動をしようとする人にとっては、特に勇気付けられます。
「自分の居場所ではない」
話は10年前の代々木体育館に戻ります。求職者は入場すると受付で横長の分厚いしおりのようなものをもらいます。ここに、合同面接会に参加している企業のすべての求人情報が記載されています。確か300社とかそのくらいの数の求人が載っていたと思います。
その殆どが給料が安く、単純作業のみの仕事内容。高い給料の求人があるとしても、翻訳などのような専門知識が必要なものでした。世間に名の通った会社でも「これじゃ生きていけないよ」というレベルの給料なんですね。まるで法定雇用率を達成するためにしょうがなく採りますとでも言いたげな内容に思えて暗澹たる気持ちになりました。
その頃、障害者雇用は身体(障害者)しか相手にしないという話がまことしやかにささやかれていました。身体の障害は目に見えるのでどのように援助すれば良いのか分かるが、精神障害は目に見えないないから援助のしようがない。そんなことも頭をよぎり「実は面接後履歴書を捨てられてるんじゃないか」と思ってますます気が滅入ってしまいました。
さらにその気持ちに追い打ちをかけたのは、おそらく中程度から重度の精神障害を患っている求職者の人たちの様子でした。母親や父親に付き添われて、この日のために新調してもらったであろうスーツを着て、なんとか就職しようと面接ブースで一生懸命喋っているのです。しかし、しどろもどろだったり、発音すらおぼつかない。それでも傍で食い入るように見守る付き添いの親。きっと就職するのはむずかしいんだろうな、親はこれが終わったら一緒に帰りながら「頑張って喋ってたね!何か美味しいものでも食べて帰ろうか」とか励ましたりして必死に就職口を探しているんだろうな、などと本人と親の気持ちに(勝手に)思いをはせてしまい、ものすごく悲しくなって見ていられなくなってしまいました。
本当に申し訳ないのですが、少なくとも自分はそこまで支援が必要な障害の程度ではなく、自分はここにいるべきではないと思ってしまいました。それが伝わったからか、それとも身体障害じゃないからか、その時いくつか受けた面接はほぼご縁がありませんでした。
その後
上の記事には、障害者雇用専門の転職エージェントが紹介されていました。この頃はまだそういったサービスは殆どありませんでした。たまたまハローワークの障害者雇用求人票で、おそらく障害者雇用のことをよく理解していかったと思われる会社が、他の求人よりも頭抜けて高い給料を提示していました(それでも、当時の私の同世代がもらっていたであろう平均的な額よりは少なかった)。業務内容も単純作業ではなかったので、これこそ自分が応募するべきものだ!と連絡をして、そこに入社することができました。
その後のその後
そうして入った会社も、頑張り過ぎて自分を追い詰めてしまい、いわゆる二次障害を起こして休職して退職してしまいます。それから色々すったもんだはあったものの、今はタスク管理で自分の弱点を補う仕組みを作ることができたので一般雇用でちゃんと働けています。
「どっちつかず」のグレイゾーンの方々
当時の私のように、発達障害などの精神障害の当事者であっても、工夫すれば一般雇用でも働ける、つまりグレイゾーンの人たちはたくさんいると思います。今のままだと一般雇用で働けないか働ける自信がない、かと言って障害者雇用の安い給料では給付金などの金銭的な土台がなく社会生活を続けていけない、という方々。どっちを向いても行き止まりです。
グレイゾーンを救うスキル
上で紹介した記事のように、一般事務もやらせてもらえて配慮もしてもらえる求人を探すのもありですが、いずれにしてもそれ相応の事務処理スキルを持っていることで、一般(に近い)就労環境での仕事ができるようになり自分を救ってくれます。グレイゾーンの方々が社会に出てやっていくためには、どんな仕事でも必要とされる事務処理スキルがあるととても有利です。それがタスク管理だと私は思っています。
グレイゾーンの方、タスク管理は、身に付ければ一般雇用でも十分に通用するものだと私は思います。10年前の代々木体育館での私のように悲しい辛い思いをしないよう、タスク管理を是非ご一緒に。