環境を自分に合わせるという「自分勝手」のススメ
孫正義さんの名言「髪の毛が後退しているのではない、私が前進しているのである」という、ユーモアを効かせた前向きなツイートはあまりにも有名です。
なぜ有名になったのか。それは「自分を環境に適応させる」という基本姿勢が我々一般に染みついているからだと思います。その逆、「環境を自分に適応させる」という考え方は、なかなか出てきませんね。それどころか、自分勝手だという印象を持ちかねません。孫さんの言葉がユーモアの一種だと受け取られることが、その証でしょう。
すべてのプロジェクト、何十とある個人的なメモ書き、長期的な目標の数々、__何もかも書いておくことが重要だ。しかしこれらには自動操縦機能がついているわけではないので、放っておいてもしかるべき場所に収まることはない。だから、これらが習慣的に目に触れざるを得ない状態にしてやらなくてはいけない。(デビッド・アレン「ストレスフリーの仕事術 仕事と人生をコントロールする52の法則」より)。
ここで大事な点は、自分がメモを探すという考え方をしないということです。「メモが無い?じゃあ探そう!」という方向にいくのが一般的には自然な思考です。そこをあえて「自分の目につく所にメモを置く」という逆の発想をする。タスク管理というかライフハックに近いものも感じます。
デビッド・アレンは、同じ本の別の箇所で「絶対に忘れたくないものは、玄関のドアの前に置いておく」と言っています。この「なりふり構わなさ」をやり過ぎと見るかその通りと膝を叩くか。私は後者を選びます。忘れてしまうリスクに比べたらなりふり構っている隙など毛の先ほどもないのです。これはもうほんとに声を大にして言いたい!
あと2人、なりふり構っていない人の話をします。
1人目はスティーブ・ジョブズ。服を選ぶという行為に費やす思考のエネルギー、精神力すらもったいないとして、毎日同じ服装だったというエピソードは有名ですね。まさに彼こそなりふり構っていません。
2一目は、往年の名指揮者レナード・バーンスタイン。彼は部屋ごとにメガネを置いていたそうです。ピアノを弾くためのメガネ、作曲をするときのメガネ、指揮をするときのメガネ、何か書き物をするときのメガネ、食事用のメガネ等々。ちょっと記憶が曖昧ですが、そのくらいに場所と用途によってメガネを使い分けていたそうです。これも、1つのメガネでやりくりをするのではなく、一般的な常識からするとちょっと外れている「用途ごとにメガネを用意」という環境を整え、「メガネメガネ(イントネーションは「↓↑↓↓↑↓」)」と探し回るエネルギーをカットしていたのです。
共通しているのは、自分を環境に合わせるのではなく、環境を自分に合わせるという考え方ですね。
真面目な人は自分勝手で許されないと考えます。もちろん、越えてはいけない自分勝手さはあります。しかし、自分勝手かどうか、そして、自分勝手であっても許されるものかを、いったん立ち止まって考えるのもありだと思います。