仕事の線引きをしつつ助け合うことは可能か
私が週一回講座を行なっている就労移行支援事業所のEXP立川で、「僕が定時で上がれるようになった6つの理由」という内容の話をしました。
そこで、アドラー心理学の「課題の分離」の話を会社での仕事、タスク管理と絡めて紹介しました。いや、紹介したというよりは、「ブッ込んだ」という表現に近いかもしれません。
課題の分離とは
ベストセラーになった「嫌われる勇気」の根幹となる考え方です。こちらに詳しく説明されています。
わたしの提案は、こうです。まずは「これは誰の課題なのか?」を考えましょう。そして課題の分離をしましょう。どこまでが自分の課題で、どこからが他者の課題なのか、冷静に線引きするのです。
「冷静に線引きする」。この表現から、どういった印象を受けるでしょうか。非協力的で冷たい感じがしますね。
当日講座を受講した利用者の皆さんは、組織で仕事をすることに真面目なので、100%肯定はなかなかしづらかったと思います。
会社の仕事に課題の分離を持ち込む
会社での仕事にこの考え方を流用しようすると、おそらくこんな反応を受けると思います。
ところがこの提案、偉い人たちに反対されてはねられちゃったんです。
偉い人たちの論点は、簡単にまとめるとこんな感じでした。
・責任を明確にすることによって担当部署が委縮してしまうかも知れない
・「我々には責任がない」という、他部署のセクショナリズムを招いてしまいかねない
お偉い方の考えは分かります。確かに「自分の業務はここまでだから、それ以外はやりません」という態度が明らかな人は感じ悪いですね。ここぞというときに協力してくれない、役に立ってくれない。
火中の栗を拾っていた私
タスク管理を始める前、私は自分の所属する総務部の業務を「どこの部署からも引き受け手がない仕事を行う」と考えていました。それはあながち間違いではないと今も思っています。
しかし、それと「自分のキャパを超えても仕事を引き受けるべき」と取り違えてしまっていました。お恥ずかしながら、火中の栗を拾いに行くような姿勢にヒロイズムを感じてしまっておりました。
そうした姿勢で仕事をした結果、当然ながら体と精神を壊しました。人間ってキャパオーバーすると使い物にならなくなるんだな、と実感しました。
まずは自分の守備範囲を明確に
そのようなかなりの代償を払って得た教訓は次の3つ。
- 自分の受け持ち業務を明確にする
- 自分ボール持ちタスクを明確にする
- 仕事は原則的に定時まで
一言で言うと、自分の守備範囲を明確にすることでした。
1と3は会社の規程や法制度が後押ししてくれます。具体的に言うと、1が会社の「職務分掌規程」、3が会社の「就業規則」と労働基準法です。
さて、2をどうするか、です。
タスク管理でボール持ち概念を可視化
そこで私は、今自分が抱えるタスクそれぞれが自分ボール持ちかどうかを、タスク管理ツールで可視化することにしました。
こうすることで、何でもかんでも自分の仕事として背負っていた私のメンタリティが変わりました。自分ボール持ちでないタスクの荷を下ろすというイメージをすることができるようになりました。
それでも助け合いは美しい
ここまでの説明だと、「自分はこれ以外やりません!(プイッ!)」という人になれ、という話で終わってしまいます。基本はそれで良いのですが、「守備範囲外だけど協力する」と意識して、周囲の仕事を手伝うことができるようになります。
つまり、野球で言えば「外野なんだけどレフトもセンターもライトもしまっせ」という無茶苦茶な守備範囲ではなく、「私はライトなんだけど、時々センターが追いつかなそうなときには、彼の守備範囲まで走って捕球しまっせ」「バックホーム返球のときはセカンドさん、ボールの中継頼んます」というようなものです。
組織で仕事をする上では、せっかくなので部署横断で助け合って遂行していくのは大事なことだと思います。ただ、そのためには、自分のやるべき範囲をきちんと明確にしておかないと自滅してしまいます。
自滅してしまいがちな傾向がある人は、「ここが私の守備範囲と決めるべき」と相当意識しないと、自滅を繰り返してしまいます。矛盾するようですが、組織で助け合えるようになるためには、まずは課題の分離が必要だと思います。