「従業員」から「利害関係者」になって人間らしく働くために必要なものはタスク管理に含まれている、という仮説。
こちらの記事を興味深く読みました。
会社で働く従業員は、果たして人間らしく過ごせているのだろうか。階層的な組織の中で雇用関係を結ぶのとは違う形の、利害関係人として会社とフラットな関係で仕事に関わることが、これからの時代は必要になってくるかもしれない。そんなメッセージを感じて、ワクワクしました。
セムコ社の基本理念
この記事で引用されている、ブラジルのセムコ社の基本理念のインパクト、なかなかのものです。
- 従業員は(自己管理ができる)大人であると信じること
- 従業員それぞれの働き方は多様であると認めること
これをもう一段階ブレイクダウンするとこうなります。
- 組織階層がなく組織図もない
- ビジネスプラン、企業戦略を持たない
- 決まったCEO, CIO, COOがいない
- 人事部がない
- キャリアプランがない
- レポートの義務がない
- 社員を監視、監督、管理しない
(社員のやる気研究所「奇跡の経営を実現する方法」より)
テスラ社のイーロン・マスクの全社メール
また、テスラ社で、イーロン・マスクが全社員に向けたメールの内容もすごい。特に印象的な部分を抜粋します。
テスラで働く全ての従業員は誰でも、最速で問題を解決して会社に貢献できると考えた相手に対し、直接メールや口頭でコンタクトを取ることができるし、そうすべきだ。直属の上司の許可なしに、その上の上司に話を持って行っても良い。他部署の統括マネージャーにコンタクトを取っても良いし、私(マスク氏)に接触しても良い。誰にコンタクトを取る場合であっても、誰からの許可も必要としない。さらに、物事が正しい方向に進むまで、自分にはその義務があると考えて良い。
どういう働き方なのか
正直、両社の考え方をもとに、具体的にどう働くかをイメージするのは難しいと感じました。今の日本の会社のほとんどが採用している階層型の組織体系とコミュニケーション方法に慣れていると、なかなか理解しづらいものです。
ただ、イーロン・マスクのメールにある「物事が正しい方向に進むまで、自分にはその義務があると考えて良い。」というメッセージは、両社が求める働き方を理解するのに大いにヒントになると思います。あくまで「自分」という個人が責任と義務を負うということです。
おそらく、組織図は限りなく曖昧にして、「田中さん」「鈴木さん」「中村さん」「●●さん」という人がずらっと並ぶリストがあるのみ。例えば田中さんが契約書作成に長けていれば、取引が始まりそうなときに契約書の作成を鈴木さんが個人的に田中さんに依頼する。そういえば、中村さんはシステム開発の経験があるから、取引に必要なシステムの開発を依頼しておこうと鈴木さんは考える。部署単位ではなく個人単位の関係性の中で収益を生み出していく。
およそこんな感じなのではないでしょうか。
あまり自信がありませんが、少なくとも今の会社とは全然違った考え方をしているかと思います。全員が、部署や所属長の名前ではなく、自分個人の名前でタスクを把握し、目的を明確化して、実行する。
それでもなかなか想像できない
そういった働き方であれば、確かに大人な(自己管理ができる)従業員像や、多様な働き方をしている様子がある程度は思い浮かびます。しかし、「では、業務情報の共有をどのようにしていくのか」「評価制度をどのようにするのか」など考えてしまい、「そんなこと無理だよなぁ」と、自分の想像力の限界を感じてしまいます。
とはいえ、テスラ社やセムコ社のような理念を掲げる会社が今後多くなるとしたら、そのために自分ができることは何かと考えることは必要かと。
今、自分にできること
おそらく、大人になる(自己管理ができる)こと、多様な働き方にも対応できるようになること、そのためには自分がどうなれば良いのか、どのような仕事のスタイルを採れば良いのかを考えることかなと思います。私にとっては、すべての答えはタスク管理に通ずると言っても過言ではないのですが、今回もそれです。タスク管理ができれば、テスラ社セムコ社のような理念の会社でもやっていけるのではないかと考えます。
自己管理ができること
自己管理は、自分の健康と業務を管理することに大別できるかと思います。
健康管理は古今東西誰しも課題となっているので割愛。
仕事上の業務管理といえば、どんな業務タスクがどれくらい発生していて、進捗状況はどうなっているか。どう進めていけばタスクの目的を達成できるか。これを把握しておくことだと考えます。
多様な働き方を可能にすること
職種によりますが、少なくとも物理的な場所や人に依存しない働き方が可能なように、自分の働く環境を整備することかと。会社にあるキャビネットを開かないと書類が参照できない、隣にいる同僚に聞かないとやり方が分からない、自分のデスクの上にある書類の山の中を見ないとタスクの内容を思い出せない、といったことです。
タスク管理は、自己の業務管理と、多様な働き方を可能にする
自己管理、多様な働き方の2つは、タスク管理をすることでかなり実現できるのではないかと考えています。もし、今の所属している会社の理念が明日からいきなり「自分で主体的に仕事をしよう」「どこでどうやって働いてもいい」となったとしても、自分が働いているイメージはできるような気がします。
セムコ社のやり方は?
実際どのような働き方をセムコ社は推奨しているのか。先に紹介したブログでこんな内容がありました。
「いったいどうやったら本に書いてあることを実現できるのか?」。
残念ながら、本の中にはそのメソッド(方法論)は明らかになっていない。結果としてセムコがどういう会社になっているか、どういった制度がセムコ社の中で採用されているかだけが書かれている。そして、もちろん奇跡の経営の考え方、思想だ。
あまりにも問合せが多くあり、私自身も知りたいことであったので、翻訳者の立場を利用して著者でありセムコの経営者であるリカルド・セムラーにコンタクトし、どうやったら奇跡の経営を実現できるのか、その方法を教えてもらおうとした。
しかし、リカルドから返ってきた返事は、「メソッドなどない」ということだった。
(中略)
社会では大人とみなされ、そして家庭に戻れば、どこへ出掛ける、何を買うといったことを決めるデシジョンメーカーであり、リーダーだ。そんな社員が、会社組織の中では若造扱いされ、何をするにも上司の承認が必要で、やったことは逐一上司に報告しなければならない、なんておかしいではないか。
社員は、立派な一人前の大人であり、自己管理できるのだ。それをなぜ管理監督しなければならないのだろう。そんなことは社員の誰も望んでいない。
こうした信念がセムコにはある。それはセムコの価値観であり、その価値観に基づいた文化が、今のセムコの制度となっているのだ。」
読んでいてワクワクする反面、メソッドなどないと言われると、「どうすればいいんだろう……」と考え込んでしまうかもしれません。
私は、タスク管理を真摯に実践すれば、自分なりにやれるのではないかという仮説を立てています。
最後に
サイボウズ式の記事では、記事内で紹介されている講演はマネジメント層、経営者向けのものであることを述べた上で、「従業員の心構えも重要な要素の1つではないでしょうか。」と締めています。
その心構えとは、自分の抱えるべきタスクを洗い出して、あるいは創り出して把握し、その目的に向かって進捗管理をしつつ周囲の協力も仰ぎながら実行をしていく主体性を持つ、ということだと思います。まさに、タスク管理はその心構えをシステムに落とし込んだものだと思います。
つい熱くなってしまいました。
上長から振られる仕事をこなすだけの「従業員」という働き方に、少しばかり虚無を感じています。純日本的な会社で「人間的らしさを取り戻」して「利害関係に」として関わることができるか、私の仮説を実証してみたくなりました。