「それ以上詳しく調べるほどの給料はもらっていない」
「それ以上詳しく調べるほどの給料はもらっていない」
イギリスのビル警備員が、自分が警備していた360億円相当の宝石が盗難被害に遭ったときに言った台詞です。
警報が鳴ったにもかかわらず、部屋の中まで調べなかったことを咎められたときに言ったセリフとのこと。「よく言った!」と讃える声もあれば、「それは警備員として職務怠慢なのではないか」と言う声もあります。
さすがに警備員として仕事をしていて警報が鳴っているのに原因を突き止めずに放置するのはどうかと私は考えますが、「よく言った!」という気持ちもわずかながらあります。
この話で大事なのは、自分のやるべきことを明確にしているというところかと思います。
自分の中で、自分の果たすべき役割をはっきりさせておく
会社勤めをしているのであれば、自部署の業務領域と自分の職位による決裁権限の範囲を両軸に、自分の果たすべき役割が「形式上は」明確になります。
今自分が取り組んでいる仕事がこの範囲内にあるかどうかを認識しておくことはとても大事だと考えます。
やらなくていい仕事も引き受けてしまう
責任感や正義感が強いと、自分の役割の範囲から大きく外れる仕事も率先して引き受けてこそだと考える傾向があるように思います。これは良い考え方です。実際、自分が期待されている以上の働きをし、それが評価されてより多くの大きな仕事を任されていくのが日本における多くの会社における評価です。
ただ、範囲外のチャレンジングな仕事を引き受けまくった結果、自分が仕事を続けられない状態になったり、本来自分の職務の範囲であった仕事をおろそかにしてしまっては元も子もありません。
私は、まさにこのタイプでした。期待以上の働きをしたいと思い、頑張って背伸びをして仕事を引き受けた結果、自分が今抱えている業務タスクが把握しきれなくなり、抜け漏れやミスを多く発生させてしまいました。
まずは足元を見よう
そこで学んだことは、次の2つです。
- 自分の抱える業務タスクをすべて把握する
- これから引き受けようとするタスクが自分の通常業務にあるのか、チャレンジングなものなのかを区別する
2ができていれば、「すみません、これはちょっと今すぐにはできないのですが、来週であれば時間が取れるので、そのときにやってみたいんですが…」といった形で、やみくもに引き受けるのを避けられます。
そのために前提として必要なのが1の「全タスク把握」です。今、自分がどんなタスクを抱えているかを知ること、つまり自分の足元をいったん見ることで、リミッターが効かない状態でどんどん仕事を引き受けてしまうのを避けることができます。
GTDの「把握」
そこで威力を発揮するのがGTDの「把握」ステップです。「気になることすべてを書き出す」という把握ステップは、「そもそも今抱えきれないほど仕事を引き受けているから今は無理」「今は余裕があるから引き受けて大丈夫」という判断に大きく貢献します。
とはいえ、その判断ができない場合もありますね。「この仕事は社運をかけたプロジェクトに大事なものだから、絶対にやってくれ」と言われるようなことも可能性としてはあります。
そんなときに、通常業務を先送りして急対応をするにも、自分がどんな業務をどれくらい抱えていて、それらの締切がいつなのかを把握していると自信をもって先送りをすることができます。
最後に
ちょっと背伸びして仕事を引き受けるにも、「それ以上詳しく調べるほどのお給料はもらっていない」と断るにも、自分の抱えるタスクを把握していることはとても大事です。
この警備員がGTDを知っていたかは分かりません。この事件に対しての姿勢が正しいかどうかは、私は是とは言えない気がしています。ただ、自分の役割を過不足無く理解しておくことは、間違いなく自分がストレスフリーに仕事を進めていくのに必要であると思います。