生きづらいけど生きのびたい!「 #発達ハック 」コンテスト 参加レポート
こちらのイベントのレポートを書きます。
「 #発達ハック コンテスト」に参加してきました。最後に「タスク管理を広めるためには?」と質問しました。
— 小鳥遊 (@nasiken) 2019年3月31日
特に後半のフリートーク&質疑応答が良かったです。登壇された4名の回答が素晴らしく、ずっとこの時間が続けば良いのに…と思いました。
とにかく登壇者の話に吸い込まれたの一言に付きます。
登壇者の「やっちまった」話
まずは、アイスブレイクを兼ねて登壇者である光武克さん、姫野桂さん、鈴木悠平さん、オムグレイ事務局代表オムさんそれぞれの「やっちまった」話から。
みなさん、診断の有無に関わらず発達障害当事者ということで、エピソードには事欠きません。「ついさっきころんだ」「先週iPhone失くした」「先日電車を乗り間違えた」といった具合に、当事者が共感できる内容の話が続々と出てきました。
失敗談を話せば話すほど場が暖まり、「おれもだ」「私もです」と共感が広がって会場の連帯感が上がっていった感じがしました。
発達ハックの表彰
続いて、#発達ハック というハッシュタグでつぶやいてもらったツイートから選ばれて「○○で賞」と名付けて表彰がされました。
「タスク管理うまいで賞」
「資料作りがうまいで賞」
「LDあるある賞」
「トーク頑張ったで賞」
等々……。
個人的に印象的なものは、次の2つでした。
仕事用の服をローテーション化してしかも9割ユニクロという「服選びラクで賞」
睡眠の記録から自分が頑張れない日を予測して頑張らないでも大丈夫なようにあらかじめスケジューリング(天才!との声が漏れていました)するという「頑張らなくてもいいで賞」
ひとしきり表彰が終わった後、鈴木さんが「精神論での『頑張る』でどうにかしないのが大切」、姫野さんが「可視化するのが大事」というコメントをつけていて、まさしくそうだなと改めて感じました。
登壇者のMyHack
次に、登壇者MyHackが披露されました。
- 苦手な仕事は請けない(姫野さん)
- お金の管理は枠を作ってそれ以上は使わないようにする(光武さん)
- 発達特性ならではのフォロー出費(※)という科目を家計に入れる(オムさん)
- 会議中にすぐタスクを振る(鈴木さん)
※イベントごとに文房具を忘れてはさみが5個もあったり、同じペンが50本もあったりするような、発達障害特性による出費
さらに、姫野さんから「人と暮らすためのライフハックを教えて欲しい」という質問が他の登壇者へされました。妻帯(経験)者の返答はこちら。
- 郵便受け見た?と玄関の電気のスイッチ下に貼られている
- ときどき「1人で飯食って帰る」のを理解してもらう
- やることを言語化して奥様と共有(以上3つ鈴木さん)
- タスクリストが玄関に貼られている(光武さん)
ここまでで前半は終了しました。とにかく登壇者の経験談が具体的で、しかもそれらとどう向き合っているかも分かり、とても参考になる話が続出しました。
後半はフリートーク&質疑応答
メモ不足で、後半がどのように始まったかが分からないのですが、おそらく発達障害当事者と就労に関してのテーマからだったと思います。
- 「発達障害グレーゾーン」発売後たくさんの取材を受けたが、当事者のイメージが固定化されているような気がする。また、「向いている仕事は?」とよく訊かれるが、発達障害当事者はスペクトラムなので返答に困る(姫野さん)
- 障害特性云々よりも、その人がどのような願いや夢を持っているかが大事。そのために自己理解とそれを相手に伝える力が大事(鈴木さん)
- 社会のニーズを見極めるのも必要。具体的には社会にとって意味があるかどうか。発達障害バーは発達障害者800万人のニーズがある(光武さん)
続いて「合理的配慮は、社会から?当事者から?」という質問。
- 両方とも大事。対立構造にしない(オムさん)
- 社会が配慮すべきだが、当事者も工夫しなければいけない(姫野さん)
- 配慮を求めるなら、当事者からもそれなりの価値を提供しなければいけない(光武さん)
- 合理的配慮は元は”Reasonable accommodation”なので、調整という意味合いがあり、一方的なものではない(鈴木さん)
次に「自己理解をするためにはどうすれば良いか」という質問
- 自分の良いところを他人に訊いた(オムさん)
- 書くことで自己理解が進んだ。第三者に入ってもらうのも良い(鈴木さん)
- 心理検査が大きかった。あとは人に会うこと。一歩ひいて考える時間を数秒作るのも良い(姫野さん)
- 自己肯定感と切り離すのが大事。当事者はほぼ「自分が全部悪い」と考えてしまうので、誤った自己理解へミスリードしがち(光武さん)
さらに「キャリアアップすべきかどうか」という質問がありました。このときに「キャリアアップとは?」という確認があり「管理職へ昇進すること」という定義になりました。
- 昇進すべきかどうかは自分の価値観に照らして考える。昇進だけが給料を増やす道ではない。(鈴木さん)
- マネジメント層になってこその人生、とは考えない方が良い(光武さん)
- 新卒で入ってキャリアアップして勤めあげる、というモデルの「昭和的な会社」はどんどん潰れていっている(姫野さん)
- 昭和的な思考を引きずっている会社もあり、転職が難しい人もいる。発達当事者はマネジメントできないと決めなくても良い。マネジメント経験者の仕事ぶりをメモするのは良い。当事者会の参加者にもマネジメント経験者がいるので、そのような人の仕事のしかたもマネする価値がある(オムさん)
さらに、就労先となる「企業」と自分という観点でこんな質問が出ました。
「自己分析、企業の求めているものを知りたい」
- 就労支援サービスを利用する(鈴木さん)
- 求められるキャラを演じる(光武さん)
あっという間に時間が経ち、「最後の質問」というコールがありました。そこで、発達障害当事者に多く接している登壇者へ「当事者の『個』を見るにあたって気を付けていることは?」という質問が飛びました。
- 価値観を否定しない(光武さん)
- 疑問に思ったら躊躇せず素直に訊く(姫野さん)
- そもそも理解できないという前提に立って、相手と適切な距離を取る。こちらで勝手に価値付け(それはいいですね、等)をしない(鈴木さん)
- 理解(鉄道が好きなんですね)と共感(鉄道良いですよね)を分ける(オムさん)
ここで質問は終了……のはずだったのですが、しつこく挙手する輩(私)がいたので、時間が無い中ご厚意で質問をすることができました。
私も当事者の一人ではあるのですが、同時に、当事者へタスク管理を教えるという支援者の立場にもあります。タスク管理に人生救われたと言っても良いくらいの経験をしているので、是非ともタスク管理を広めたいと考えています。
しかし、「タスク管理」という言葉を聞くだけで拒否反応を起こす人もいて、どうしたら良いか、、、と悩んでいます。それについて、登壇者に是非意見を聞きたいと考えました。
ということで、本当に最後の質問を私からしました。「『可視化』『タスク管理』という言葉が前半よく出てきましたが、当事者へタスク管理を広めるためにはどうしたらよいか?」
- こんまりメソッドのような「心がときめく」みたいなワードがあると良い。「外付けHDD」みたいな分かりやすい言葉を使うとか(鈴木さん)
- 相手にとってタスク管理をする納得感、自分にとってメリットがあると思えるかどうかが大事(光武さん)
- 自分はタスクを終わらせるためには諭吉を思い浮かべてます(姫野さん)
お答えいただき、ありがとうございました!!
クロージング
最後に各登壇者から一言、ということでこんなコメントがありました。
- youtubeチャンネル登録してね(光武さん)
- 本買ってね(姫野さん)
- 発達障害30代成人説というのがあり、みんな希望を持って年を取ろう(鈴木さん)
- 当事者が困りごとやその対処法などを発信して後世に残していく「第三世代」の時代になっている感があり、このイベントもその象徴(オムさん)
光武さんのyoutubeはこちらです。
姫野さんの著作はこちらです。
私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音
- 作者: 姫野桂,五十嵐良雄(メディカルケア大手町院長)
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2018/08/05
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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鈴木さんつながりで、私がLITALICO仕事ナビで「発信する当事者たち」企画で書いて鈴木さんに編集していただいた記事がこちら。
オムさんが代表をつとめるOmgray事務局のHPはこちら。
最後に
とにかく登壇者の真摯な姿勢と熱さが印象的なイベントでした。特に、実際にお会いしたかった、LITALICO仕事ナビでお世話になった鈴木悠平さん、前々からフォローしていただいていた週刊SPA編集部の秋山さん(イベントの司会をされていました)に直接ご挨拶できたのが嬉しかったです。
長くなりましたが、イベントの雰囲気を感じていただけたら幸いです。