楽器の練習にタスク管理の方法論を流用する
音楽とタスク管理
音楽は芸術であって、きちんと論理立てされた因果関係を基に進捗させていくタスク管理とは別次元の問題のように思えるかもしれません。
面白いことに、私の周囲の優秀なアマチュア音楽家は理系が多いのです。イメージと違います。マルコム・グラッドウェルという人が成功には1万時間の熟考された練習が必要だという法則を世に広めました。
楽器の習熟もこの例に漏れず方向性を持った、分析を伴う練習を積み重ねることが必要です。
合奏の練習もタスク管理
楽器の習熟だけでなく、複数人が集まって1つの曲を演奏するための練習する場も、とてもタスク管理的アプローチが有用だと感じています。
ざっと1回最初から最後まで演奏して、練習しなきゃいけない点をピックアップ。これがタスク管理手法GTDの「収集」です。
練習しなきゃいけない点それぞれについて何のためなのかを明らかにします。どうしても演奏が途中で止まってしまう箇所があったり、出が揃わなかったり、ニュアンスが合わなかったりといったタスクにそれぞれ「演奏し通せるようにする」「縦の線を合わせる」「ニュアンスを合わせる」という目的を明確にします。これはGTDでいうと「見極め(処理)」と言います。
合奏の練習では、こうしたタスクをどういった優先順位でやっていくかがとても大事になります。練習時間が有限だからです。
まずは曲が止まらないことが最優先なので、止まってしまう箇所をゆっくり演奏してどこが原因でどうしたら譜面通り演奏できるかを明確にします。その場で直せるなら直して、個人練習が必要なら後でやっておいて下さいねと言って終わります。これがGTDでいう「選択(実行)」です。
そうすることで1つ1つの問題(タスク)をクリアしていき、段々と曲の完成度を上げていきます。この過程はGTDでいう「更新」でしょう。
冷静な頭、熱い心
音楽は感情に直接訴えかけるものなので、理性的なイメージのあるタスク管理とはあまり馴染まないとお思いかもしれません。しかしその実は幾重にも重なった楽曲分析と自己(演奏)分析に支えられた結果現れるものです。ある指揮者は、演奏に際してあるべき状態を「冷静な頭、熱い心」と表現していました。