上手い演奏家は「見て」分かる
音楽家は「聴く」前に「見る」
私は趣味でクラリネットを吹いております。中学の吹奏楽部から続けていますので、四半世紀が経つことになります。その中で、自分は置いておいて、上手い人は音を聞かなくても大体分かることが経験から実感しています。演奏しているのを見ただけで、「あ、この人は上手いな」と分かるんですね。
「型」の存在
なぜ演奏している様子を見ただけで上手いと分かるのか。そこには、「型」の存在があります。
その演奏者が楽器を構える。おもむろに演奏し始める。演奏し終える。この一連の動作にも「型」があります。
楽器を構える時には、例えば管楽器であればブレス(息継ぎ)を適切な時間を取って十分な量吸わなければなりません。力を抜いて、息がしっかり入るように姿勢を整え、口の形を作る必要があります。
いつも安定して演奏するためには、音を出すまで、そして音を出している最中や終わった後の所作まで、その人なりの決まったパターンがあります。それが「型」であり、どんな曲のどんな時でも一貫していると、見ただけで上手いと分かる、という塩梅です。
仕事にも「型」がある。私が提唱するGTDはひとつの「型」である。自分の注意をひくものすべてを収集し、処理し、整理し、レビューして実行する。その「型」を習得するまではその効果が上がっているかを考えるのに忙しいだろう。しかし、いったん習得してしまえば、その「型」を超え、あなたは「自分がするべき、本当の仕事」を発見できるようになる。
あなたは自分にとってうまくいく、仕事の「型」を持っているだろうか。そしてその「型」を意識しなくていいぐらいのレベルで習得できているだろうか。
(デビッド・アレン「ストレスフリーの仕事術 仕事と人生をコントロールする52の法則」より)
「型」=「勝ちパターン」
演奏家に限らず、何かをする時に自分なりの「型」がある人は安定して結果を出していると言えます。言い換えれば「勝ちパターン」です。
なぜ型があると勝ちやすくなるのか。それは、パターンとして固定化して体に覚えこませるレベルまで無意識の行動になっているため、あれこれと迷いが生じないからだと考えます。その状態を手に入れるため、何かの道を極めようとする人は、反復して訓練して体に覚えこませようとするわけですね。
世界最高のオーケストラの1つ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターを務めた安永徹さんは、「練習は何のためにあるのか」という問いに対して、「本番で頭が真っ白になっても身体を動き続けさせるためにある」と答えています。まさに型の究極的な効果ではないでしょうか。
「これが勝ちパターンだ」と提示されたら……
プロの演奏家でさえ毎日何時間も訓練するのは、その「型」を身につけるのが大変だからです。「これがあなたの『型』ですよ」と言われて即実行できれば苦労はしません。
一方、タスク管理の世界ではGTDという(ほぼ)世界共通の「型」があります。「これをこういう風にやって……」と、手取り足取りやり方を教えてくれています。しかも、身につけるためには、音楽家のような「血のにじむような努力」までは必要ではありません。適切なツールを使い、GTDの定める5つのフローを実践すれば、自然と結果がついてきます。突き詰めればタスク管理も深いのでしょうが、(GTD対象者デビッド・アレン曰く)多くの人がGTDを仕事に取り入れている事実、そして私にとっては同様の個人的な経験がその証拠かと。
このツール、お主!?……
楽器の腕もそうですが、タスク管理のスキルについてもツールを使う姿を見ただけで「お主、デキるな……」と言われるような世界ができたらいいなと思います。