タスク管理界隈は、「作りたい」精神にあふれている。
プロダクトアウトとマーケットインという考え方があります。両方ともマーケティング用語です。
プロダクトアウトの一般的な定義は、会社の方針や作りたいもの、作れるものを基準に商品開発を行うことを指します。
プロダクトを作ってから、どのように販売していくかを考えるスタイルです。マーケットインの一般的な定義は、プロダクトアウトとは反対に顧客の意見・ ニーズを汲みとって製品開発を行うことを指します。
どちらが良いかは、一様には言えないようです。需要を見極めないといけないから、市場調査をきちんとして「売れる」モノを創り出す必要があるという考え方は圧倒的に正しいです。しかし、今大きく飛躍している企業の中には、完全に「自分たちはこういうものを作りたい」とモノを作っている企業もあります。
売りモノの存在価値は「役に立つ」「意味がある」の2軸に分けられるという面白い記事を読みました。
世の中で売れているモノっていうには必ず、「役に立つ」っていうベネフィットか、「意味がある」っていうベネフィット、どちらかがあります。「役にも立たないし意味もない」っていう商品は、世の中に存在できません。
今までは役に立つモノが売れてきました。これからは意味があるモノの価値がより高く売れる傾向にあるのだそうです。
車は分かりやすい例だそうです。役に立つから車を買う。一方で、役に立たない、意味しかない車もあります。
これ、3,000万とか5,000万とかします。値段は10倍です。10倍~20倍ぐらいします。「じゃあ10倍人運べるんですか?」っていうと「いや運べません、むしろ二人しか乗れません」と。「荷物はどうなんですか」、「ほとんど荷物積めません」。「じゃあいろいろなところ走れて役に立つんですか?」「いや、車高が低いんで悪路走らないでください」と。「雨が降ったら危ないんで走らないでください」と、こんな感じで。
「これでなければ!」という意味は無いけど役に立つ車がマーケットインの思想が濃く、役に立たないけど意味はある車はプロダクトアウトの思想が濃い、と考えられます。
タスク管理界隈、もっと狭めて言うとタスク管理ツール界隈(ほんと狭い…)は、個人発のツールはプロダクトアウト色が強いと思います。いや、強いというかプロダクトアウト色しかないと言ってもいいんじゃないかと思います。
タスク管理界の誇る金字塔「TaskChute」は、開発者の大橋悦夫さんがご自分の仕事をやりやすくするにはどうしたら良いかと考えて作ったエクセルがもとになっています。
その個人発信のタスクシュート式時間管理術は、多くの賛同者・理解者、そしてタスクシュート関係ツールユーザーを生み出しました。また、エクセルベースの「TaskChute」と「TaskChute2」、iPhoneアプリの「たすくま」、そしてクラウドで使える「Task Chute Cloud」という3つの製品が作られています。驚くべきことに、この3つは全て開発者が異なるということです。非常に象徴的な、プロダクトアウトの精神の発揮例ではないでしょうか。
タスクシュートと比べるのはおこがましいのですが、タスクペディアも同じく私が自分のために作ったツールがもとになっています。素晴らしい開発者とその周囲の方々に助けられて理解者が増えつつある点も、タスクシュートに似ているかなと思います。違うのは、大橋さんが「より高みを目指すため」だったのに対し、私は「マイナスからせめてゼロへ到達するため」だったことです。
そして、タスクペディア特有なのは、原作者である私がタスクペディアの原型を作ったときには「タスク管理」への理解はおろか、その言葉さえ知らなかったということです。「マーケット?何それ美味しいの?」状態ですね。
しかし、タスクペディアの良さは個々の機能にあるわけではない。優れているのは、その設計思想だ。
まず、タスク管理の前提知識がない状態で作られたツールなのでとっつきやすい。見積時間やコンテキスト、PDCA等、スノビズムにまみれた難解な要素で汚されていない。
タスク管理(ツール)界隈は、TaskChuteはもとより、TodoistやRememberTheMilk、OmniFocusなどの既製品を使う人もいますが、今もなお「こんな風にツール作ったらいいかも」「自分はこうしたいです」といった感覚が根付いているような気がします(私の周囲に奇特な方が多いだけかもしれませんが)。
個人的には、こういった「作りたい」というプロダクトアウトの精神が乱立している状態の方が面白いなと思っています。「ご要望のものをと思って作りました!」も良いですが、「ねぇ、これって最高なんですよ。ほら。ねぇ。」とニヤニヤしながらにじり寄ってくる感じのタイプの人の方が好きです。
そんな愛すべきタスク管理(ツール)界隈で、タスクペディアを携えつつ、より一層たくさんの方々へにじり寄っていきたいと考えております。
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