点字を覚えずに点字プログラムを読める人はいない。
わたくしが以前所属していたアマチュアオーケストラでは、毎回視覚障害者の方々にご来場いただいていました。その方々のために点字プログラムを作り、盲導犬を連れてくる方のための席も用意していました。
私が入団したときから当たり前のようにやっていましたが、あまり他の団に類を見ないことでした。
話は変わります。
お笑い芸人チュートリアルの徳井さんが、いわゆる脱税の疑いがかかっているというニュースがありました。
納税を先延ばしをしてしまっていたという徳井さんのコメント、加えてレンタルビデオ延滞料が高額になったことや、公共料金の支払いをせず電気ガス水道を止められるなどの徳井さんのエピソードに対して、発達障害の当事者やその関係者が反応しているようです。
忘れてはいけないのは、私も含めた発達障害、とりわけADHDの特性である先延ばしや抜け漏れは広く受け入れて「ドンドンやりなさい」といわれているようなものではないということです。
私は、家では特にお金関係の手続きが壊滅的にできない(しない)ので、妻におんぶに抱っこ状態です。
会社から給与明細をもらったらそのまま妻に渡しています。マネーフォワードのアプリを入れていますが、操作はほぼ妻にしてもらっています。買い物をしたら、レシートは買い物をしたビニール袋に入れて品物ごと渡すようにしています。ちなみに、レシートをビニール袋に入れて渡すという習慣が身につくまで2〜3年はかかりました。
さらに、出かけるときにスマホや財布を忘れて戻って来たり、クリーニングの受け取りを忘れたり、来客のためのマンションの駐車予約の紙を取り忘れたり、細かいやらかしに枚挙のいとまがありません。ただ、それらは私と妻のみで完結するので特別に受け入れてもらっているわけです。
一部の発達障害当事者は徳井さんのエピソードに共感してるように、私も「そうだよなぁ、ついやっちゃうよなぁ」と共感します。
ただ、
だから先延ばし癖を許して受け入れて欲しい
という雰囲気を漂わせてしまうのは、おそらくわれわれ発達障害当事者にも、その他の方々にも、すべての人にとって良いことはないのは、容易に想像がつくのではないでしょうか。
根っからの甘えたがりな私は、同じように共感する人が多いとつい嬉しくなって「先延ばし癖、みんなに許して欲しいなぁ」と思ってしまいます。近しい人の厚意を、そんなに近しくない人たちにも求めてしまいたくなるのです。少しして「いや、それは良くない」と襟を正すことになるわけですが。
- 先延ばし癖というものがあるという事実を認める
- 先延ばし癖を容認してもらおうとする。
この1と2を切り離し、2を避け1を土台にして、先延ばし癖にどう対処するかを考える良い機会ではないかと考えます。
世間の理解は少しずつですが深まってきたように思います。だからこそ、なおさら先延ばし対策を本人がちゃんとすることが大事なのではないかと思うのです。
冒頭で書いた、オーケストラの演奏会にいらっしゃる視覚障害者の方々は、盲導犬や点字プログラムという配慮はしてもらうものの、点字を覚えたり、盲導犬を連れて歩く訓練はご本人でされているからこそ演奏を楽しめるのです。
先延ばしに対して、周囲はできるだけ理解する、当事者本人もできるだけ先延ばしをしないように対策を打つという双方向の努力が必要だと考えます。
先延ばし対策として本人が努力することは何かというと、他人がその作業を代わりにしてくれるという手段がない場合、つまり自分の手でどうにかしなければいけない場合には、タスク管理が一番現実的だと私は思います。
習得する手間はある程度かかりますが、点字を覚えずに点字プログラムを読もうとする視覚障害者はいないように、せめてタスク管理の習得を頑張るくらいは、やっても良いのではないかと思います。
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